クレオール文化が生んだ天才ピアニスト ジェイムズ・ブッカー

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「ジェイムズ・ブッカー 愛すべきピアノ・ジャンキー」

 米南部でもとびぬけて風変わりで知られるニューオーリンズ。東海岸南部から西部まで2500キロの綿花地帯を背にする一方、カリブ海交易の要衝でもある。そこから経済も人種も芸能や文化も混ざり合った独特のスタイルが生まれた。それがクレオールだ。

 現在都内公開中の「ジェイムズ・ブッカー 愛すべきピアノ・ジャンキー」はこのクレオール文化が生んだ天才ピアニストのドキュメンタリー。

 ニューオーリンズで生まれ、16歳で年を偽って地元のクラブでピアノ弾き。クラシック、ジャズ、ブルースまでなんでもこなし、ファッツ・ドミノのレコーディングやウィルソン・ピケット、B・B・キング、リトル・リチャードのツアーにも参加したという。

 他方で大口たたきのホラ吹きは芸人の常。とはいえ借金のカタに左目をえぐられたとの噂は普通じゃない。海賊みたいな眼帯がトレードマークだが、本人はビートルズのリンゴ・スターと喧嘩して目がつぶれたと言ってたらしい。

 映画では80年代に一世を風靡したハリー・コニック・ジュニアが幼いころ彼になついていたと語り、ブッカー独特の奏法を分析する場面もある。ピアノはリズムとメロディー、つまり打楽器と管楽器の要素を同時に演奏できる。それがクレオールのごちゃまぜ文化にマッチして“ジャズの父”ジェリー・ロール・モートンやプロフェッサー・ロングヘア、ブッカーや弟分のドクター・ジョンら数々のピアノ弾きを輩出した。コニックとその父まで登場して語る思い出話は感涙ものだ。

 ニューオーリンズはドラマ「ばけばけ」の小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが新聞記者として過ごした街でもある。当時彼が出版した地元料理の案内書が「小泉八雲のレシピ帖」(鈴木あかね訳 河島弘美監修 CEメディアハウス 1980円)。その原題がまさしく「ラ・キュイジーヌ・クレオール」なのである。 

〈生井英考〉

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