女優・黒木瞳さん「母の味のうどん屋さんを黒木町で開きたい」まずは来年1日限定で

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黒木瞳さん(女優)

 女優の黒木瞳さんの死ぬまでにやりたいことは、地元の福岡県八女市黒木町でうどん屋さんをすること。それは幼い頃に見た風景のひとつだった。祖母と両親の苦労体験を振り返りながら、プライベートの夢を語ってくれた。

  ◇  ◇  ◇

 私の父方の祖母は博多にお嫁に行ったのですが、夫と幼い娘を腸チフスで2週間の間に亡くしました。亡くなった長女の弟、1歳くらいの男の子が私の父。祖母は幼い父を連れて、地元の黒木町に帰るしかなかったようです。

 ひとりの女性が、2週間のうちに夫と幼い娘を亡くすということは、想像するだけで私ならとても耐えられないことです。

 祖母は間借りをして駄菓子屋みたいな小さな店を始め、その後うどん屋を開き、再婚をしました。父が結婚し、母はうどん屋を手伝っていました。

 そしてうどん屋が食堂になり、さらに料理屋さんに変わっていき、賑やかな店になっていった様子を、私は物心ついた年齢からずっと見てきたのです。祖母が亡くなってからも母が店を続け、夜遅くまで賑わっていましたから、私は母ともっと接したくて寂しい気持ちもありました。私が宝塚に入る前の1970年代後半まで店をやっていました。

 私は宝塚歌劇団に入り、85年に退団して芸能界へ。娘が生まれた時期は仕事がすごく忙しかったので、母が東京まできてくれて、私の夫や娘のためによくうどんを作ってくれました。その頃、母からうどんをはじめ、店で出していた親子丼やちゃんぽんなどいろんな料理を教わりました。母が一番得意なのはやはりうどん。

■鶏ガラがポイント、関西とも東京のうどんとも違う

 1キロの鶏ガラを煮込んで出汁を取る九州のうどんですが、母は「東京に鶏ガラ売ってない」と。でもたまたまあるお肉屋さんで手に入れることができました。これが絶妙においしいんです。関西とも東京のうどんとも全然違います。やはり鶏ガラがポイントですね。

 私は麺を手打ちで作ることもありました。これはメチャクチャしんどいですけど、おいしいですよ。

 故郷では4月中旬から5月上旬にかけて八女黒木大藤まつりがあるのですが、できれば来年、1日限定でうどん屋さんを開きたいんです。これが近い目標。

 小さな町ですから保育園から高校までずっと一緒の、すぐ集まってくれる友達がたくさんいます。家族や親戚、そして同級生が多く地元にいますから。私もみんなも故郷とのつながりが濃いんでしょうね。

 私が「お祭りでうどん屋さん、やるよ」と言ったなら、集まってくれると思います。

 実は「ショートショートフィルムフェスティバル」(代表は俳優の別所哲也)に、私が故郷を舞台に監督した作品をコンペティションに応募したらノミネートされ、いろんな映画祭で上映されていて、故郷でも今秋上映されました。その時、故郷で仲のいい友人と、「来年、八女黒木大藤まつりでどうやってうどん屋を出すか」打ち合わせしました。全て故郷の食材を使おうかとか計画を立てるのも楽しかったです。

 その1日限りのうどん屋さんで、もし経費以外に利益が出ましたら、八女市の方々の役に立てるようにしたいなあと思っています。

 そして死ぬまでの目標は、母の味のうどん屋さんを黒木町で開きたい。もちろん女優としての仕事はやっていきますが、女優とは全然違うプライベートな夢です。

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