著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

2022年ドラマ界を総括! 強い印象を残した“秀作5本”をメディア文化評論家が徹底解説

公開日: 更新日:

社会現象になった「silent」

 10月クールは実り豊かなものとなった。まず、「silent」フジテレビ系)がある。ヒロインの紬を演じたのは川口春奈だ。高校時代の恋人・想(目黒蓮)と8年ぶりに再会するが、彼は耳が聞こえなくなっていた。それが突然姿を消した理由であり、空白の時間を埋めながら自分たちの未来を探っていく2人。音のない世界で歩み寄る男女の本格派ラブストーリーだった。

 手話による会話場面がじっくりと描かれ、見る側は表情のかすかな変化も見逃すまいと画面から目が離せない。とっぴな事件や出来事ではなく、それぞれの日常を丁寧に見せることで静かな共感が広がっていった。

 やがてロケ地に人が集まる「聖地巡礼」現象が起き、見逃し配信サイト「TVer」の再生回数が最高記録を更新し、放映時のツイート数も国内トレンド1位を獲得するなど、一種の社会現象となる。役者陣の演技力はもちろんだが、登場人物たちの複雑な感情を繊細に表現する演出も見事だった。

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