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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

2022年ドラマ界を総括! 強い印象を残した“秀作5本”をメディア文化評論家が徹底解説

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 今年も暮れようとしている。3年目となったコロナ禍。ロシアによるウクライナ侵攻。不況と値上げ岸田政権による軍事国家へのまい進など、安全も安心も得られないままの年末だ。それでもドラマの世界では、見るべき成果がいくつかあった。強い印象を残した秀作で、この一年を振り返ってみたい。

 ◇  ◇  ◇

■「妻、小学生になる。」の奇抜な設定は「生きるとは何か」というテーマのためだった

 1月クールで挙げたいのは、「妻、小学生になる。」TBS系)だ。10年前、新島圭介(堤真一)は妻の貴恵(石田ゆり子)を事故で失った。以来、圭介も娘の麻衣(蒔田彩珠)も無気力なままだ。

 ある日、父娘の前に見知らぬ小学生・万理華(毎田暖乃)が現れ、自分は「新島貴恵」だと主張する。実は貴恵が万理華の体を借りて一時的に現世に戻ったのだ。この奇抜な設定は、「生きるとは何か」というテーマのためだった。

 最終回では、万理華の姿をした貴恵との「最後の一日」が描かれた。だが、それは特別なものではない。一緒に朝食を作り、食卓を囲む。3人で麻衣の洋服を買いに出かける。あくまでも「日常」であり、だからこそ愛おしいのだ。

 人は結末の見えない有限の時間を生きている。その時間の使い方の中に生きることの意味を見いだせるのだと、このドラマは伝えていた。

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