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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

(1)亡き夫が気持ちよく眠っているようで…

公開日: 更新日:

 大切な人を亡くした直後、多くの人が強い心身の不調を経験する。眠れない、食欲が落ちる、動悸がする、涙が止まらない──。医療の現場では「急性悲嘆反応」と呼ばれることもある。深い喪失は、それほどまでに心身に影響を及ぼす。

あのとき、(亡き夫に)もしエンバーミングをしていなかったら、と思うと身震いします」

 こう話すのは、都内在住の山川陽子さん(54=仮名)。昨年12月30日に、夫(58)を胆管がんで亡くしたばかり。1年7カ月の闘病の大半を自宅で過ごせており、11月は2人で外出もできていた。

「お正月も一緒」と思っていた矢先に、体調が急変。朝、緩和病棟に緊急入院した日の夕方に亡くなったのだ。子供はいない。いわく「夫がすごく優しい人だったから」、夫婦仲がとても良かった。病室で、山川さんが膝枕をし、頭をなでているとき、眠るように旅立ったという。苦痛の顔でなかったのが幸いだったが──。

「黄疸の症状が出て、皮膚の色が黄色くなってきていたんです。私もつらかったですが、愛知県から出てきて夫に会うのが久しぶりだった85歳の義母がいたたまれないだろうと、心が痛みました」

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