著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

2022年ドラマ界を総括! 強い印象を残した“秀作5本”をメディア文化評論家が徹底解説

公開日: 更新日:

「個」としての生き方が問われた「エルピス」

 最後は「エルピス─希望、あるいは災い─」(カンテレ制作・フジテレビ系)。アナウンサーの浅川恵那(長澤まさみ)とディレクターの岸本拓朗(真栄田郷敦)が、死刑囚の冤罪事件の真相を探っていく物語だ。

 それは平坦な道ではなかった。テレビ局という組織独特の「常識」や「タブー」に揺さぶられ、さらに社会の闇というべき巨大な力に翻弄される。その過程で問われたのは「個」としての生き方だ。

 制作陣は1990年に起きた「足利事件」など、現実の冤罪事件に関する文献を参考にしたと表明している。

 冤罪事件は警察や裁判所など公権力の大失態だが、マスコミが発表報道に終始したのであれば、結果として冤罪に加担したことになる。

 自分たちにも批判の矛先が向きかねないリスクを抱えながら、テレビ局を舞台にこうしたドラマを作るのは実に挑戦的だ。脚本は朝ドラ「カーネーション」などの渡辺あや。プロデューサーは、「17才の帝国」と同じ佐野亜裕美である。

 来年も、作り手の強い意志を感じられる作品が、一本でも多く登場することを期待したい。 
 

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い