「ひまわりの迷宮 中原淳一評伝」砂古口早苗著

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「ひまわりの迷宮 中原淳一評伝」砂古口早苗著

 昭和の前半に生まれ育った少女たちの多くは、「それいゆ」「ひまわり」「ジュニアそれいゆ」など、中原淳一がつくり出す雑誌の世界に胸を躍らせた。美しくて、おしゃれで、芯が強そうな少女像と、新しいライフスタイルの提案は、今見ても全く古びていない。美への鋭い感性で時代を切り開いた中原淳一とは、どんな人物だったのだろう。淳一の娘へのロングインタビューも交えて実像を追いかけた評伝。数多く収録されている絵や雑誌の誌面が楽しい。

 1913(大正2)年、香川県生まれ。19歳で人形作家として注目され、雑誌「少女の友」の表紙絵や挿絵が評判になった。画学生のころから竹久夢二に傾倒していたが、きらきら輝く淳一の才能は、叙情画家の域を超えて花開く。ファッションデザイナー、インテリアデザイナー、編集者と、多彩な仕事を手がけるマルチクリエーターだった。あふれ出るアイデアを筆一本で表現する過酷で孤独な日々。睡眠時間は1日2、3時間という超仕事人間だった淳一は、40代半ばで病に倒れ、第一線を退くことになる。

 一方で、よき家庭人の顔も持っていた。27歳の時、宝塚のトップスター、葦原邦子と結婚。2男2女の父となる。娘たちは、美しく暮らす術を父からじかに学んだ思い出を楽しげに語っている。

 だが、また別の顔も見せる。38歳の淳一は、多忙な日常から逃れるように渡仏。妻・邦子を介して知り合った歌手、高英男とパリの安アパルトマンで暮らした。帰国後、シャンソン歌手となった高との親交は、終生続いた。

 多くの資料と証言を手掛かりに、中原淳一という迷宮をさまよった著者は、理想を失わない現実主義者を見つける。竹久夢二が描く女性がはかなげな宵待草なら、中原淳一が描く女性はひまわり。しなやかで強い。だから古びない。いつの時代も、「美しく、強く生きようよ」と、女性たちを力づけてくれるのだ。

(実業之日本社 3080円)

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