著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

(2)葬儀に訪れた人が“本人”と握手をし、声をかけ、別れを告げる

公開日: 更新日:

 前回紹介した山川さん(仮名)の体験に出てきた「エンバーミング」。言葉は聞いたことがあっても、正確に理解している人は多くないだろう。日本語に訳すと「遺体衛生保全」だ。

 エンバーミングは、19世紀半ばのアメリカで発祥した技術である。きっかけは南北戦争(1861~65年)。戦地で亡くなった兵士の遺体を、故郷に長距離搬送する必要性と、「遺族の悲しみを軽減させたい」という目的から生まれた。

「解剖学の遺体保全技術が応用された技術です。死亡後の痩せ衰え、苦痛に満ちた表情、あるいはケガの強い印象を和らげるため、死者と対面しての別れが重要視されるアメリカで、一般のお葬式に普及しました」(葬送ジャーナリストの碑文谷創さん)

 感染症の予防のためにもエンバーミングは広がりを見せ、現在、北米ではエンバーミング率が90%以上になっている。

 葬儀社のサン・ライフ(神奈川県平塚市)の創業者・竹内惠司さんは、1980年代にアメリカへ視察に行き、エンバーミングの遺体に驚いた。

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