犯罪に出くわす時
「犯罪被害者代理人」上谷さくら著
「犯罪被害者代理人」上谷さくら著
いまも忘れがたい東京・池袋で母娘を犠牲にした暴走事故。あのとき被害者遺族の夫のかたわらで弁護人を務めたのが本書の著者だ。かつては犯罪の加害者に弁護士がついても、被害者やその遺族は一般の傍聴人と同じように傍聴席で黙っているしかなかった。2008年に被害者参加制度ができたことで被告人への質問や証人の尋問、検察官へも説明を求めることができるようになった。しかしこれをうまく機能させるためには被害者や遺族も十分な理解が求められることが本書でわかる。
本書の白眉は性犯罪の被害者の代理人としての経験談だろう。弁護士になって20年。その間に性犯罪の裁判だけで数百件を手がけ、いまも彼女たちの支援が仕事の中でも最多だという。
実際に担当した事件では、レイプ被害に遭った女性の訴えを検察が処分保留でうやむやにしかけたところを、相談者の心に寄り添うことで乗り切って起訴に持ち込んだ過程がくわしく説明される。
DVや性犯罪の加害者臨床にたずさわる専門家との協同では、2018年からコロナ禍を挟んでこれまでに10回以上シンポジウムを開いてきたそうだ。法は不正と闘う必須の手段。それを実践する法曹の志がうかがわれる。
(集英社 1100円)
「それ犯罪です!」松井浩一郎・アトム法律事務所著
「それ犯罪です!」松井浩一郎・アトム法律事務所著
ふだん何げなくしていることが、実は法的には犯罪になることがある。たとえば出先で断らずに勝手にスマホを充電したらどうなるか。電気は財物としてあつかわれる。ゆえに管理者の意思に反して電気を無断で使用すると、窃盗罪が成立する。そんな程度のことで? と思っても法律は法律なのだ。
会社で部下にいらだって「君は使えない」と言った場合もパワハラによる「精神的攻撃」と判断される場合がある。昭和のオジサン世代はよくよく注意すべきだろう。本書の著者は刑事事件と交通事故対応を専門とする弁護士。テレビの法律バラエティー番組では常連級だから名前を知る読者も多いはず。10代のころを海外で過ごした経歴の持ち主だからか、「なぜアメリカには懲役200年とか、極端に長い刑期があるのか」など、ちょっとした法律雑学も混じった読み物になっている。
(祥伝社 1870円)
「交通トラブル六法」藤吉修崇著
「交通トラブル六法」藤吉修崇著
急速に現実化し始めた自動車の自動運転。この乗車中に事故ったら責任はどこに(誰)にあるか。現時点では「ドライバーの責任」。高速道路などで通称「ネズミとり」ことオービスに引っかかったとき、顔を隠していたらセーフか? これも完全にアウト。実は運転中にマスクをかぶっていたらそれだけで違反になるのだそうだ。こんな雑学的な話から始まる本書。
駐車場内での接触事故とか急ブレーキによる追突事故などで聞くのが「過失割合」。たとえば一時停止や徐行義務の順守、優先道路を走っていたかどうかなどをもとに「どちらが事故を避けるために何をすべきだったか」を細かく規定する。ただし裁判官によって判断がバラバラになるのを避けるために、過去の判例をベースにするという基準もある。どれほど歩行者が信号無視しても車側の責任が重くなるのはそのためだ。これを避けようと思えばドライブレコーダーの映像をはじめ、相当な客観的証拠が必要になるということだろう。
事故に遭ったときは現場の写真をすぐにスマホで撮影しておくのは有効だ。相手とのやりとりも口約束などはNG。注意には注意を重ねてが大原則だ。
(KADOKAWA 1870円)



















