市川猿之助容疑者は能力はともかく人格は…澤瀉屋の悲劇は“血筋”優先の後継襲名が招いたか
4代目市川猿之助容疑者(47)が先月29日、母親の延子さん(75)の自殺ほう助の容疑で東京地検に送検されたが、真相究明にはまだまだ時間を要しそうである。そんな中、3代目猿之助で現在の市川猿翁(83)が甥の猿之助容疑者を後継者に選んだことが悲劇のはじまりになったという声が広がっている。
4代目猿之助の襲名以降、先代のスーパー歌舞伎で活躍していた役者たちは窓際に追いやられ、主戦場を別の舞台に移すなどしており、しわ寄せをくらわせた猿之助をよく思わず、猿之助容疑者のプライベート情報が流出したという見立てである。
市川猿翁がスーパー歌舞伎の演者から勇退すると、3代目市川右団次(59)は澤瀉屋の次世代を担う花形役者として、女形の市川笑也(64)と共に「スーパー歌舞伎第2世代」を盛り上げた。大阪の日本舞踊の名家に生まれ、慶応中学入学と同時に上京。3代目猿之助の部屋子となり、市川右近を襲名した。高身長で華のあるルックス、さらに慶応ボーイと高学歴でバラエティー番組やドラマにも出演し“イケメン役者”としても注目を浴びた。
一方、長男の香川照之(57)を「あなたは息子ではない」「二度と会うことはない」と実子にもかかわらず近づけず、2003年には亀治郎(現猿之助)と父で猿翁の弟でもある段四郎(76)が一門を離脱していたこともあり、血縁関係が疎遠に。そうした中、スーパー歌舞伎で主演を務める右団次は次第に後継者的存在に浮上。周囲も澤瀉屋は血縁にこだわらない一門になると期待していた。
右団次も10年に誕生した長男・市川右近(13)の名前をスーパー歌舞伎の演目「ヤマトタケル」から「タケル」と命名。自身も周囲の期待に応えるべく、澤瀉屋を背負って立つつもりだったに違いない。
ところが12年に4代目猿之助を襲名したのは、右団次ではなく、亀治郎。さらに香川が中車を、香川の長男が団子を襲名。結局、世襲制に落ち着き、右団次の影は次第に薄くなっていった。
芸能リポーターの川内天子氏がこう言う。
「事件を引き起こしてしまいましたが、猿之助さんが圧倒的な実力の持ち主だったのは周知の事実。疎遠になっていた時期があったとしても猿翁さんは“この人しかいない”と考えていたはず。周囲も異論を唱える人はいなかったでしょう。右団次さんも革新的でありつづける澤瀉屋を背負うのはきっと猿之助さんだろうと思っていたでしょうし、右団次の名跡を襲名できたことを喜ぶことはあっても、猿之助襲名をねたむには及ばない。猿之助さんには、やったことがなくても演じられる、踊ることができる、生まれ持った強みもありますが、何より、環境に溶け込みつつ、顔芸など歌舞伎の手法も現代風にアレンジして表現する能力があるからドラマも映画も引く手あまたでした。猿翁さんは歌舞伎の門戸を広げましたが、結果として一番実力のある者が血縁だったということでは」
週刊誌で後輩役者へのセクハラ、パワハラが報じられ、それを気に病んで両親と心中の道を選んだと供述しているという猿之助容疑者。素養、環境、能力はずば抜けてはいても、肝心の人格が至らなかったことが招いた悲劇だったのかもしれない。
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