松田優作「国籍の重さと女の重さ」(1)国籍問題への沈黙は、差別という暴力に対する正当防衛だった
のちに優作は「ずいぶん恐喝されたりお金を取られたりしたから、ケンカに強くなりたいと思ったきっかけといえばそういう非常にくだらないことだったんですね」(「徹子の部屋」八〇年四月二十九日放映)と語っている。ただしこの発言は下関の荒くれた風土に関連づけられたもので、優作は国籍問題を自ら語ることはなかった。
優作の理解者だった女優の桃井かおりは、「(国籍のことは)優作にはコンプレックスみたいな精神的なものじゃなくて、切り傷のような痛手として残って」(「越境者 松田優作」以下同)いたのだろうと推察している。換言すれば、優作の国籍問題に関する沈黙は、差別という暴力に対する正当防衛だった、という意味につながるだろう。
こうした問題に対する意識は人それぞれである。優作とは学生時代から接触があり、同じく在日二世の劇作家・つかこうへいは自著「娘に語る祖国」でこう書いている。
「ときどき若い在日韓国人の人たちから、『あなたを目標に頑張っていきます』と、手紙をもらうのです。もしかしたら、パパはこの人たちのよりどころじゃないかと思うのです。


















