追悼・佐々木昭一郎さん 是枝裕和、河瀬直美らに大きな影響を与えた唯一無二の映像作家

公開日: 更新日:

幻の録音テープが昨年発見される

 佐々木ドラマの特徴のひとつはプロの俳優ではなく、市井の一般人を主役に据え、その内面の魅力を引き出すことにある。この手法は是枝裕和河瀬直美、塚本晋也ら多くの映画監督に影響を与えた。

 2014年には、韓国人留学生を主演に初の長編劇映画「ミンヨン 倍音の法則」を撮り、話題になった。

 学生時代に「四季・ユートピアノ」を見たときの衝撃は忘れられない。後に、取材を通じて知遇を得たが、それ以来長きにわたって交友を重ねた。筆まめな佐々木さんから最近まで三日にあげず、近況メールをいただいた。

 去年、佐々木さんが一番喜んだのは、幻のテープが発見されたこと。「二十歳」(65年、脚本・寺山修司)は吉永小百合20歳の記念に作られたラジオドラマで、テープが現存しないため、幻の作品だったが、一般聴取者の録音が見つかり、NHKがアーカイブ放送した。「効果音のハイドンのセレナーデは小百合さん自身がピアノで弾きました」と58年前の録音秘話を教えてくれた。

 近年は遠藤利男氏(92、元NHKエンタープライズ社長)が年末に行っている狂言発表会を見に行って、3人で一献傾けるのが慣例になっていた。

 遠藤氏は佐々木さんの特異な才能を見いだし、彼の不遇時代にプロデューサーとしてバックアップし、自身もディレクターとして革新的なラジオドラマ、テレビドラマを手がけ、NHKドラマ史に大きな足跡を残した。

「ミンヨン」を製作した山上徹二郎氏によれば、佐々木さんは「もう一本映画を撮りたい」と最後まで創作に意欲を燃やしていたという。

 表現者として生き抜いた佐々木さん、安らかに。 合掌

(山田勝仁・演劇ジャーナリスト)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    二階堂ふみと電撃婚したカズレーザーの超個性派言行録…「頑張らない」をモットーに年間200冊を読破

  2. 2

    参政党・梅村みずほ議員の“怖すぎる”言論弾圧…「西麻布の母」名乗るX匿名アカに訴訟チラつかせ口封じ

  3. 3

    キンプリ永瀬廉が大阪学芸高から日出高校に転校することになった家庭事情 大学は明治学院に進学

  4. 4

    さらなる地獄だったあの日々、痛みを訴えた脇の下のビー玉サイズのシコリをギュッと握りつぶされて…

  5. 5

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  1. 6

    山本舞香が義兄Takaとイチャつき写真公開で物議…炎上商法かそれとも?過去には"ブラコン"堂々公言

  2. 7

    萩生田光一氏に問われる「出処進退」のブーメラン…自民裏金事件で政策秘書が略式起訴「罰金30万円」

  3. 8

    二階堂ふみ&カズレーザー電撃婚で浮上したナゾ…「翔んで埼玉」と屈指の進学校・熊谷高校の関係は?

  4. 9

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 10

    日本ハム中田翔「暴力事件」一部始終とその深層 後輩投手の顔面にこうして拳を振り上げた