著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(13)ムツさんの論理的な頭は普通じゃなかった…キツネの謎の挙動に一発回答

公開日: 更新日:

東大に勉強もせんと入った人

加納「うん。表情も変えずに一発で答えた。俺は知性主義が好きじゃなかったから、物事をそういうふうに捉えるのが苦手だったのよ。でもムツさんは常に論理的に考えていて、過去の知識も段階的に脳のなかにストックして、論文読んだり本読んだりもしている。とにかく知的で行動的な人」

増田「典明さんから見ても、やっぱり頭のいい人なんですか」

加納「東大に勉強もせんと入った*人だから。普通の頭じゃなかったよ」

※東大に勉強もせんと入った:畑正憲は大分県立日田高校でとくに優等生ではなかった。しかし好きな科目には満州時代からの馬力で集中、特に数学を中心とした理数系で力をつける。医師であった父親から医学部進学を強要され、矛先をそらすために東京大学理科2類へ現役合格。「進振りで医学部へ行く」と嘘を言ってのものだった。その後、父に隠して文学部へ傍系進学しようとするが、最終的に理学部生物学科へ進学した。

増田「どんなことでも、たとえば人間関係のことから何からこう分析して、明晰に話せる人なんですね」

加納「うん、そう。俺は写真家だから感応の世界を生きてるわけ。感性の世界。論理じゃない世界。論理を論理の中で生きてない。感応とか感性というか、そういう世界を俺は生きてるわけ。それの先に何かないかって探してる生き方なわけだから」

増田「じゃ、その逆の世界を生きていたというか」

加納「うん。彼は論理を証明するのが好きなんだよ。数学的というのか論理的というのか」

増田「ムツさんと典明さんは逆の世界を生きていたと」

加納「そうだね。ムツさんは論理、俺は感応と感性の世界」

(第14回につづく=火・木曜掲載)

▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。

▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  2. 2

    「備蓄米ブーム」が完全終了…“進次郎効果”も消滅で、店頭では大量の在庫のお寒い現状

  3. 3

    小芝風花&森川葵はナゼ外れた? 来秋朝ドラ「ばけばけ」ヒロインを髙石あかりが射止めた舞台裏

  4. 4

    オレが立浪和義にコンプレックスを抱いた深層…現役時代は一度も食事したことがなかった

  5. 5

    参政党のあきれるデタラメのゴマカシ連発…本名公表のさや氏も改憲草案ではアウトだった

  1. 6

    阿部巨人が今オフFA補強で狙うは…“複数年蹴った”中日・柳裕也と、あのオンカジ選手

  2. 7

    さや氏の過去と素顔が次々と…音楽家の夫、同志の女優、参政党シンボルの“裏の顔”

  3. 8

    参政党さや氏にドロドロ略奪婚報道の洗礼…同じく芸能界出身の三原じゅん子議員と“お騒がせ”な共通点が

  4. 9

    ドジャース大谷翔平「絶対的な発言力」でMLB球宴どころかオリンピックまで変える勢い

  5. 10

    自民党を待ち受ける大混乱…石破首相は“針のムシロ”のはずが、SNSでは〈#やめるな〉が急拡大