大林宣彦と上田誠の世界が融合したタイムループ映画「リライト」 角川映画全盛の「時をかける少女」を彷彿

公開日: 更新日:

 そして今回の「リライト」、法条遥の原作は舞台が静岡だが、映画は尾道に設定された。そして池田エライザ演じる女子高生が、同級生の未来人と恋に落ちていく。ヒロインがラベンダーの香りをかいでタイムスリップする能力を得るのも「時をかける少女」と同じで、キャストには尾美としのりや石田ひかりといった大林宣彦映画の常連俳優も出演。まさにオマージュを捧げる作りになっている。中盤、女子高生と未来人が別れるところまでは、83年版の「時をかける少女」を追体験している印象を受ける。

 しかし映画は、ここで終わらないのが劇団ヨーロッパ企画の上田誠脚本。彼はこれまで、壊れたエアコンのリモコンを直すため、高校生たちがタイムスリップを繰り返す「サマータイムマシン・ブルース」(05年)の脚本や、ある旅館を舞台に2分間だけ時が逆戻りするタイムループ映画「リバー、流れないでよ」(23年)など“時をかける”題材をいくつも手掛けてきた。本作では、その彼が大林宣彦作品に寄り添い、後半では自分の世界観を引き寄せて脚本を書いている。

 というのも上田誠の作品は、コメディー色が強いのが特徴。後半に、未来人との思い出を題材にして10年後、作家になったヒロインが描かれる。実は未来人が過去に来た目的は、その小説の作者を捜すことだった。小説の作者がヒロインであればここで映画は終わりなのだが、そうは問屋が卸さない。ここから本当のタイムループ映画が始まっていくのだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  3. 3

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  4. 4

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  5. 5

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  1. 6

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  2. 7

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  3. 8

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 9

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  5. 10

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  2. 2

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  3. 3

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  4. 4

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 5

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  1. 6

    半世紀前のこの国で夢のような音楽が本当につくられていた

  2. 7

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 8

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 9

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  5. 10

    プロスカウトも把握 高校球界で横行するサイン盗みの実情