「努力の天才」仲代達矢さんが明かした黒沢明監督との“確執”エピソード
黒沢作品に数多く出演されているので「黙々と歩き続ける仲代さんを気に入られたんじゃないですか?」と伺うと意外な返答が……。
「いい役者になって黒沢映画には出ない、って決めたんですよ」
それでも度重なるオファーが届き「どうしても君に出て欲しい」と監督自ら説得されて“和解”されたそうです。
「役者だけやっていれば楽でよかったんでしょうけど、役者の世界にお返しをしなければいけないんじゃないかと……」と、無名塾を立ち上げ、芝居が好きだから、役者バカだから、私財を投じておられる姿もまた並大抵のことではありません。
90歳を越えて舞台に立つこと、そしてお客さんを集めることは誰もができることではありません。観客のみなさんも仲代さんの芸を見る以上に、その“生きざま”を目に焼き付けておきたかったのではないでしょうか。
亡くなる数日前も、弟子たちに負けないよう、稽古をしなければとおっしゃっていらしたそうですから、いくつになっても向上心を持ち続けておられたのだと思います。仲代さんの辞書には「満足」という言葉はなかったのではないでしょうか。
希代の名優・仲代達矢はきっと「努力の天才」でいらしたのだと思います。



















