半世紀も親しまれる楽曲の生命力を最大限に評価する
「最優秀歌唱賞」は本物の75年レコード大賞と同じく五木ひろし「千曲川」で。授賞理由は、楽曲としてのスケール感と、五木ひろしの歌唱力のスケール感との合致だ。この曲の魅力は、当時まったく分からなかったが、50歳を越えて、いきなりグッと来た。今では名曲・名唱として推しに推したい。
同時期に、伊藤咲子「乙女のワルツ」という、ちょっと似た曲(音階がペンタトニックでリズムが3拍子)がリリースされたが、五木ひろしの貫禄勝ちだった。決まり手は「スケール感」。
そしていよいよレコード大賞。「ロマンス」「千曲川」、そしてイルカ「なごり雪」などと悩んだのだが、太田裕美「木綿のハンカチーフ」でどうだろう。
75年における歌謡曲とニューミュージックの見事なマリアージュという点に加えて、現代における知名度で判断した。つまりは楽曲としての生命力である。
「半世紀後の日本でも親しまれている」なんて、当時言ったとしても作詞の松本隆も、作曲の筒美京平も、当の太田裕美も、誰一人信じなかったのではないか。


















