「戦前エキセントリックウーマン列伝」平山亜佐子著
「戦前エキセントリックウーマン列伝」平山亜佐子著
近代日本のフェミニズム運動の先駆といえば平塚らいてうらの青鞜社の名が挙がるが、独身女性が中心だった青鞜社に対抗して、既婚女性による「新真婦人会」が設立された。同名の雑誌も創刊、その創刊メンバーの一人が夫と共に心霊療法の「観自在宗」を起こした木村駒子だ。その後駒子は俳優に転身し、さらに渡米してニューヨークで婦人参政権運動の行進に着物姿で参加する。帰国後はロシアバレエの芸術大学を創立するなど波乱に富んだ人生を送った。
本来なら先駆的なフェミニストとして「教科書に載る」女性になったかもしれない駒子だが、あまりにエキセントリックな生き方をしたためにそうはならなかった。本書には、女性にとって今よりはるかに生きづらかった明治・大正・昭和前期に、「家族に縁を切られる覚悟で、小さなチャンスをつかみ、誰が何と言おうと自分の心の声に従って生き」た20人のエキセントリックウーマンが取り上げられている。
ダイヤモンドの指輪をめぐってイタリア人実業家をピストルで撃ち、裁判で物おじしない言動で世間の注目を集めた16歳の少女、深谷愛子(その裁判の予審調書という触れ込みの偽書が発売され、映画化もされた)、浮気を疑われ身の潔白を証明するために小指を落とした芸者の照葉(この事件によって人気がうなぎ上りになってブロマイドもよく売れた。その後紆余曲折を経て最後は尼になる)、日清戦争後大陸に渡り娼家を営んで大儲けした出上キク(商売の傍ら日本軍のスパイとなり、男装して諜報活動を行った)、「堀江六人斬り」と呼ばれる遊郭での惨殺事件の唯一の生き残りとなった大石米子(事件の際に両腕を切断されるが、その後身体障害子女の養育施設や福祉相談所などを開設し、全国で講演会を行う)。
そのほか、時代や世間の束縛・常識と戦いながらも壮絶かつ大胆な生き方を貫いた女性たちの人生が描かれる。 〈狸〉
(左右社 2420円)



















