串田和美(俳優・演出家)が新作舞台『タイクツニック号沈没』を語る「“退屈”こそが豊かな時間では」
いつまでも下世話なエネルギーに満ちたものであってほしい
──内容はどのような?
「3つの物語が交互に演じられるオムニバス式の舞台です。1つはノゾエさんが書く『カモメ』の物語。あとの2本は私の書く『混沌の部屋』と、明治・大正時代にヒットした映画『怪盗ジゴマ』をモチーフにした作品です。それぞれ別々の物語だけど、一つの大きなイメージを共有しています」
──「混沌」という言葉を使われていますが。
「最近はなんでも“不条理”というひと言で片づける傾向があるので、ボクはあえて不条理とは言わず“混沌”と言ってます。自分の親が本当に親なのかと疑ってしまう不可解な感覚って人間にはある。観客がゲラゲラ笑っているうちに、あれ? っと背筋が凍るようなブラックな笑いも“混沌”ですね」
──音楽劇、とくにバーレスクにこだわるのは?
「パロディーやセクシーなダンスや歌を組み合わせたショーをバーレスクと呼ぶのですが、“演劇は限りなく音楽的に、音楽は限りなく演劇的に”というのが『上海バンスキング』以来のボクの考え方。技術的な完璧さよりも、下手でもいい、理屈を超えて立ち上がる感覚に惹かれます。それと、芸術や表現は権威になってしまっては面白くない。いつまでも下世話なエネルギーに満ちたものであってほしいという願いが込められています」
──見どころは?
「今の地球は沈没に向かう豪華客船のようなものかも知れません。乗客は沈む前にもっと豊かな退屈を楽しむべき。もちろん、舞台は歌ありダンスありで退屈はさせません」
(聞き手=山田勝仁)
▽串田和美(くしだ・かずよし)1942年、東京生まれ。吉田日出子と結成したオンシアター自由劇場の「上海バンスキング」が大ヒット。Bunkamuraシアターコクーン初代芸術監督。2003~23年、まつもと市民芸術館初代芸術監督。06年、芸術選奨文部科学大臣賞、07年、第14回読売演劇大賞最優秀演出家賞受賞。08年、紫綬褒章、13年旭日小綬章受章、15年、ウォーク・オブ・フェーム(シビウ国際演劇祭)受賞。


















