重層的で企みに満ちたスコットランド作家の短編集「五月 その他の短篇」アリ・スミス著 岸本佐知子訳
「五月 その他の短篇」アリ・スミス著 岸本佐知子訳
注目のスコットランドの作家の短編集。
「普遍的な物語」と題された巻頭の作品は、「あるところに男がいて、墓場の隣をねぐらにしていた」との一文から始まる。しかし、その男の話題は、すぐに小さな村の細い路地にある古本屋の女主人へと転じ、さらに古本屋のウインドーに飾ってある古いペーパーバックの「グレート・ギャツビー」の表紙で羽を休めるハエ、そしてその本がこの店にたどり着くまでの長い物語が語られたかと思えば、数日ぶりに現れた客が店の在庫の「グレート・ギャツビー」すべてを買い上げていく。
ほかにも、近所の家の庭に立つ木に恋をした人の話「五月」や、ベッドの中でパートナーに自らの浮気を告白する話「信じてほしい」など、重層的で企みに満ちた作品が新しい読書体験をもたらす。 (河出書房新社 1320円)


















