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スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

ビートルズ来日スペシャル④ ステージに立つと楽屋に閉じ込められるとの噂が流れた──前座を断った男たち

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ビートルズ来日スペシャル④

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 ちょうど60年前のビートルズ来日公演について、ビートルズによる音楽以上によく語られるのは、日本人音楽家によるオープニングアクト、つまり前座である。

 参加したのは、ボーカリストとして内田裕也、尾藤イサオ、望月浩。バンドとして、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、ブルージーンズ、そしてご存じザ・ドリフターズ。勘違いされやすいのだが、このときのブルージーンズに、寺内タケシは参加していない。

 この中では、望月浩だけが知名度で一段落ちるだろう。当日は1人だけ場違いな「エレキ演歌」=『君にしびれて』を歌っているソロ歌手。

 さて、今回はこの名誉ある「ビートルズの前座」を断った男たちについて語りたい。

 まずは、のちにザ・ワイルド・ワンズのリーダーとして名を上げ、作曲家としても大成する加瀬邦彦である。

↓………ここから続き………

 当時彼は、ブルージーンズにいたのだが、前座に出ると、その後、楽屋に閉じ込められ鍵をかけられ、ビートルズのステージが見られないという情報を聞き付け、ブルージーンズを脱退するのだ。

 前座を断った男たち、2人目はかまやつひろしだ。こちらはかまやつ単独ではなく、ザ・スパイダースとして前座を断っている。ムッシュかまやつ名義の『ムッシュ!』(日経BP)から、メンバー全員で前座参加の是非を検討するくだり。

「ビートルズと共演すれば箔がつくっていう人もいるけどな」「そんなに大勢の前座のなかの一本じゃあ、しょうがないよ」「やりたいことはやりたいけど……」「オレたちにもプライドってものがあるよな」「そうだな、よし断ろう」

 今になって思うのは、もしこのときスパイダースが前座に出ていたら、ということだ。オリジナリティーあふれる傑作『ザ・スパイダース・アルバム№1』(1966年)をすでに4月にリリースしていた彼らのこと。晴れの場で、かまやつひろし作曲の『ヘイ・ボーイ』『ノー・ノー・ボーイ』を披露していたら、日本のロックの歴史は変わっていたのではないか。

 最後に、加瀬邦彦が信じた「前座は楽屋に閉じ込められてビートルズを見られない」という説は本当だったのか。

 いや、実は尾藤イサオと内田裕也が、舞台にほど近い、ほぼ真正面のアリーナにふんぞり返ってビートルズを堪能している写真が残っているのである。

 でも、その後の活躍を考えると、加瀬邦彦は、やっぱりブルージーンズを辞めてよかったと思うなぁ。 (この項つづく)

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