【大統領のケーキ】フセイン独裁のイラクでいたいけな少女を騙す大人たち

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 心優しいラミアは鶏をしっかり抱いて町を歩き回る。彼女が求めるのは体罰を免れるための卵と小麦粉。だが大人たちはいたいけな少女を騙し、利用しようとする。情け容赦もない。見ていて気分が悪くなるほど、大人たちの心はすさんでいる。彼らの邪悪な心はフセインそのもの。大人どもにフセインの悪行が憑依したかのようだ。

 その根底にあるのは貧しさだろう。独裁政治と米国の経済制裁を受けてイラクの貧困は深刻さを増す。庶民の生活は苦しい。それなのに独裁者は「俺のためにケーキを作れ」と命じた。人心の荒廃という荒波に9歳のラミアはもみくちゃにされるわけだ。

 劇中に登場するフセインを英雄視するパレードには独裁者の危うさに何の疑問も持たない大人たちの愚かさが投影されている。金正恩を崇拝する北朝鮮の国民や高市早苗に熱狂する日本人を見るがごとし。警察に捕らわれた人々の物言わぬ姿も暗黒時代の象徴だろう。

 ハサン・ハーディ監督はこう語っている。

「本作では、政治的な色を出すことは極力避け、これまで描かれたことのない時代のイラクを舞台に、登場人物たちのありのままの姿を映し出すことに注力しました。それでもこの映画に政治的な要素が含まれていることは承知しています。しかし、それはフセイン政権下、経済制裁下、そして戦争下にあったイラクを描いた結果、自然に表れたものにすぎません」

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