著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

WOWOW「沈まぬ太陽」は民放では実現困難な力作ドラマだった

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 この後、物語の舞台は事故から24年前の1961年へと移る。国民航空に勤務する恩地元(上川隆也)は、労働組合の前委員長・八馬(板尾創路)の独断で、新たな組合委員長にされてしまう。それまではいわゆる“御用組合”であり、会社側の言いなりだった。だが、恩地は待遇だけでなく、職場環境の改善を訴える。

 整備部門を視察した際、恩地は驚いた。人員不足に加えて、短時間での整備を強いられており、「いつ事故が起きてもおかしくない」状態だったのだ。生真面目で正義感の強い恩地は、安全運航を最優先する主張を繰り返して経営陣の反感を買う。その結果が約10年もの海外勤務、つまり不当な報復人事だった。

 ドラマの後半は初回の冒頭で描かれた、御巣鷹の尾根の墜落事故からのスタートだった。長い“海外追放”を経て、ようやく帰国した恩地が、今度は「遺族係」として辛酸をなめることになる。

 主演の上川は、かつて同じ山崎豊子原作の「大地の子」(NHK、1995~96年)で注目された俳優だ。「そんなに筋ばかり通していたら大変な目に遭うぞ」と見る側が心配になる恩地を熱演。タンザニアやドバイでのロケ映像もスケール感と臨場感を生んでいた。

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