古書 音羽館(西荻窪)「本屋は街の縮図。誰が入ってきても何か引っ掛かる本がある店を」
入り口が2つある。左側が混んでいたので、右側から入ったら、びっくり。
いきなり棚2本に、「ジャック・デリダ講義録 死刑Ⅰ」「分断八〇年」「日本ナショナリズムの探究」……。ガチガチの思想・哲学書がびっしりと並んでいたのだ。まずとっつきやすい本、奥に進むにつれ硬いジャンルを置くというのが本屋さんの常套なのに。
「あ、いや、(思想・哲学書を)普通に買いに来る人も多いですから」と、店主の広瀬洋一さん。
■20坪弱の店内に岩波文庫から絵本、思想・哲学書まで
その後ろ90度の棚に目をやると、「新刊・新入荷の本」と小さくインデックス。三宅香帆の新書、今野敏の単行本、吉田修一の文庫など、新刊書店で今まさに旬な本がどっさり。そちらは、「専門外の本を寄贈された作家らがお持ちになる」らしい。格安。
半端ない人たちが来るってことだ。とつぶやきながら、奥でつながる左側入り口直結の売り場もぐるり。計20坪弱に、岩波文庫も、編み物や片付けの本も絵本も映画・演劇関係本も文芸も……を見てから、広瀬さんに「本屋は街の縮図。誰が入ってきても、何か引っ掛かる本がある店を──とやってきました」と聞き、しっくりきた。
「これからも“地産地消”でいく」と広瀬さん
開業は2000年。赤川次郎も稀覯本もある町田の高原書店で10年働き、独立直前に、古本ライターの岡崎武志さんから「これからは女性も入り、音楽も流れる、明るい古本屋がいい」と聞き、その言葉が「すとんと入った」。今の音羽館の骨格だ。
仕入れの大半が、一般家庭からの買い取りだそう。「アパートの床が本の重みできしんでいるコレクターさんもいたし、作家ご夫婦亡き後の家の片付けもした」なんて話が面白いのなんのって。さらに、06年から19年まで、仲間と共に100回続けたブックイベント「西荻ブックマーク」が「漢方薬みたいになった」と、地域の本好きとのつながりが深まったこともじっくり聞く。
「取材だからいいことばっかり言いましたが(笑)、よかった時代と比べると、今はしんどいですよ。でも、うちはこれからも“地産地消”でいく」
近頃よく動くのは文庫本と「映えるビジュアル本」とのことで、その代表、蓮實重彦の「『ボヴァリー夫人』論」と、「Finn Juhl and Danish Chairs」を挙げてくれた。
◆杉並区西荻北3-13-7 ベルハイム西荻窪/JR中央線・総武線西荻窪駅北口から徒歩5分/℡03-5382-1587/午前11時~午後8時、火曜休み
ウチの推し本
「おめでとうパレード」しがちなみ著
「ウチから独立した『古本天国 ノペリ書店』という本屋がいるんですが、この絵本は、その彼のパートナーのデビュー作です。“身内”の本だから薦めるのでは毛頭なく、何度読んでも素晴らしいから、推します。だるま、招き猫、鯛。おめでたい3人組が、晴れの日も雨の日も、何でもない日も『おめでとう』と祝いに出かけるお話なんです。淡く温かな色鉛筆と、声に出したくなる言葉が楽しく、どなたかへのプレゼントにもぴったりです」
(小学館刊 1540円)
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