いきものたちの命の輝きを絵に封じ込める 「きょうはなに描く?」はしもとみお著
「きょうはなに描く?」はしもとみお著
気鋭の彫刻家による水彩画集。描かれるのは彫刻作品と同じ、さまざまな動物たちだ。
絵を学び始めた19歳のときに、著者の世界は一変。「あらゆる風景、いきものたちがどうしようもなく愛しい存在に変わり」、目に見えるものすべてが「まだ描いたことのないもの」に変化したという。
描いても描いても描き足らず、始発で美術予備校のアトリエに駆け込み、一日、絵を描いて過ごしていたある日、実習が動物園であり、幼いころから動物が大好きだった著者はさらに筆が止まらなくなった。
そのときに描いて、予備校の先生から「動物、めっちゃいいな!」とほめられた絵が、冒頭に掲げられた羊を描いた作品だ。初めて目の前でいきものを見ながら描いた作品で、今も初めて描いたときのそのたのしさが続いているという。
以降、いきものをスケッチするときに「たいせつにしたい10のこと」をテーマにして、作品が並ぶ。
その1「うまく描こうとしない」──モチーフを目の前にしたら、白い紙を見つめてこころも白紙に。初めて絵を描くときのような喜びと好奇心だけを持って、だれも発見したことがない美を見つけるために描く──と書かれたページを開くと、生後2カ月の黒柴の子犬、月くんが地面にうつぶせ、何やら物思いにふけっているような絵に、「いま、この瞬間にしか描けない美 自分が何者かも。自分の名前も知らない存在を描く」との言葉が添えられている。
続く作品は、「名前をおぼえたての犬を描く 目があう喜び、ふれることができる信頼を描く」と生後4カ月の月くんをモデルにした絵だ。
その2「こころをととのえてから描く」──絵はこころの鏡となり、描いているあなた自身も写し取る──の項では、その日天国に行ってしまったカヤネズミのカジくんのたましいの抜け出す瞬間を絵にとどめる。
その3「いつでも、どんなものでも描く」では、さまざまな昆虫たちやヤモリなど、これまで「描いたことのないものを描いてみる」。
そして、その4「いまの自分を超えていく」では、「すべてが描けるもの、すべてがつくれるもの。絵が進まない、と感じるとき、自分が成長していくことで解決していく」と、異国で出会ったウサギや子どものラクダ、さまざまな猫たちを描いた作品が並ぶ。
三毛猫が目をそらした瞬間の孤高の美しさや、くつろぐ白猫など、対象が見せる一瞬の美を作品に封じ込め、永遠の命を与える。
「絵を描くことは、モチーフと共に演奏するような感覚」だと記す著者の真骨頂であり、まさにいきものたちとのセッションから生まれた作品だ。
「素直に見えたままに描く」「見えないものも、まるごと描く」と続く10のことばが絵筆を握る人の背中をそっと押してくれるはず。
もちろん鑑賞だけの人も、いきものたちの命に触れるような作品と、創作者の心の一端が垣間見える言葉によって特別な読書体験となることだろう。 (小学館 5500円)



















