築地移転にウルトラC “幻のバブル計画”こそ究極の解決策
まずはイラストを見て欲しい。東京都が1990年に作成した「築地再整備計画」の完成予想図だ。のちに再試算の結果、建設予定費が3400億円に跳ね上がり、営業を継続しながらの工事は完成までに20年以上かかることが判明。「建設費増大」と「工期長期化」のダブルパンチで幻に終わった計画だが、当時の世相はまさにバブル真っ盛り。予想図を見ると、いかに浮ついた計画だったかが、よく分かる。
新大橋通りに面した市場の正門には地上28階、高さ119メートルの「市場会館棟」なる立派なビルがそびえ、親水遊歩道が整備された隅田川沿いには、地上13階建ての「事務所棟」がデンと構える。約7500台という駐車場の計画台数は豊洲新市場の5883台を1600台以上も上回る。いかにも「右肩上がり」の発想にとらわれた整備計画だった。
現実の築地市場には逆風が吹き荒れている。1989(平成元)年には78万トンを数えた水産物の取扱量が2014年には45万トンに落ち込んだ。水産仲卸業者の数も89年の1080から昨年4月には638まで激減。いずれも再整備計画のころから4割以上が吹き飛んだ計算である。