野党時代から構想 英語試験民営化は自民政権復帰で急加速
閣僚2人の相次ぐ不祥事辞任に続く3人目になりかかっていた萩生田文科相を守り、政権への打撃を最小限に抑えるために画策された大学入学共通テストへの英語民間試験導入延期は、典型的な政治的判断だった。受験生たちは、安倍内閣の延命策に翻弄されてしまったわけだ。
被害は、導入初年度の受験生になるはずだった現在の高校2年生だけではない。民間試験導入を見越して準備を始めていた1年生や中学生にも及ぶ。また、高校3年生は「浪人すると英語試験制度が変わってしまう」との危惧から、志望校選択を手堅くしている生徒もおり、いまさら変更も難しい。このたびの政治的判断の影響は、それほど大きいのだ。
しかも、そもそも導入を決めたのも政治の力なのである。最初に提言したのは、政府ではなく自民党だった。2012年12月に政権復帰した半年後の13年5月、「自民党教育再生実行本部」は第2次提言を発表している。この組織は、安倍首相が自民党総裁に返り咲いた直後の12年10月、まだ野党だった時代にいち早く設置したものだ。提言には、「TOEFL等の外部試験の大学入試への活用の促進」が記されている。