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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

贅沢税問題が示すエンゼルスオーナーの本気度 再び積極的に球団経営を行う理由を見いだした

公開日: 更新日:

 昨年の労使交渉の際に機構が示した協定案に反対した4人の球団経営者の1人で、贅沢税の課税対象額の引き上げに強い難色を示していたのがエンゼルスのオーナーのアルトゥーロ・モレノ(写真)だった。

 モレノは昨年8月の球団売却問題へとつながる後継者問題に苦慮し、球団経営に主体的に取り組む姿勢を欠いていた。そのため、贅沢税問題についても消極的な姿勢を示していた。

■後継者問題にメド

 それにもかかわらず、今回の選手の獲得によってエンゼルスが選手に支払う年俸の総額は贅沢税の支払い基準額2億3300万ドルを超過する見込みとなっている。これは後継者問題にメドが立ったことで、モレノが再び積極的に経営を行う理由を見いだしたことをうかがわせる。

 贅沢税は、しばしば大リーグの戦力均衡化のため、基準額を超えた球団への懲罰として科され、実質的な年俸総額制の役割を果たしていると考えられる。

 だが、誰にでも機会は平等に与えられ、本人の努力次第で成功を収められるという米国社会の伝統的な考えに従えば、贅沢税は罰則でありながら、最後の勝利を目指す球団が目的の達成のために支払う必要経費の性格も持つ。

 それだけに、一時は否定していた贅沢税を覚悟して補強を行ったことは、アメリカン・ドリームを体現して球団を手に入れたモレノが、9年ぶりのプレーオフ進出に意欲を示した形となったのである。

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