「橋を透して見た風景」紅林章央著
明治31年に完成した日本初のアーチ橋である浅草橋を設計した金井彦三郎は、岐阜の下級武士の家に生まれた。4歳で父を亡くし、廃藩置県で禄を失い、苦学して東京府の下級役人となり、東京に架けられた橋のほぼすべてに関わることになった。アーチ橋を実際に見たことはなかったが、英字本だけを頼りに独学で設計したという。
また、辰野金吾が設計した東京駅の基礎構造の変更を行う。関東大震災で旧丸ビルには多数の亀裂が入ったが、東京駅にはひびひとつ入らなかった。日本がモデルにした欧米には耐震の概念はなかったが、金井の技術が震災の被害を防いだ。
橋造りに関わった技術者たちの記録。(都政新報社 2300円+税)