「不発弾」相場英雄著

公開日: 更新日:

 2015年9月、老舗の大手電機企業・三田電機に、巨額の「不適切会計」が存在することが日本実業新聞紙上に掲載された。警視庁キャリアの小堀秀明は、明らかな不正経理を「不適切会計」とする不自然な表記の背後に、何らかの強い力が働いたのではないかという疑念を持つ。

 調査を進めるうちに浮かび上がってきたのは、古賀遼という金融コンサルタントの存在。激動の金融業界を生き延びてきた彼の活躍の陰には、ある日本経済のタブーが潜んでいた。

 本書は、BSE問題を扱った「震える牛」や世界から孤立する日本産業を描いた「ガラパゴス」など、旬の社会問題を毎回見事な手腕でリアルに描く著者による最新作。今回は粉飾決算に手を染めた巨大企業を支えるために役割を果たしてきた金融コンサルタントの人生を、バブル期の熱狂やブラックマンデーなど、日本経済のたどってきた道とともに描いている。

 なぜ、老舗の大手電機会社が1500億円もの粉飾に手を染めることになったのか。本書で描かれた今にも爆発しそうな経済の不発弾は、昨今ニュースで騒がれる話題とそっくりで背筋が凍る。(新潮社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の三振激減がドジャース打者陣の意識も変える…史上初ワールドシリーズ連覇の好材料に

  2. 2

    国民民主党から問題議員が続出する根源…かつての維新をしのぐ“不祥事のデパート”に

  3. 3

    党勢拡大の参政党「スタッフ募集」に高い壁…供給源のはずの自民落選議員秘書も「やりたくない」と避けるワケ

  4. 4

    「ロケ中、お尻ナデナデは当たり前」…「アメトーーク!」の過去回で明かされたセクハラの現場

  5. 5

    注目の投手3人…健大高崎158km石垣、山梨学院194cm菰田陽生、沖縄尚学・末吉良丞の“ガチ評価”は?

  1. 6

    夏の甲子園V候補はなぜ早々と散ったのか...1年通じた過密日程 識者は「春季大会廃止」に言及

  2. 7

    コカ・コーラ自販機事業に立ちはだかる前途多難…巨額減損処理で赤字転落

  3. 8

    巨人・坂本勇人に迫る「引退」の足音…“外様”の田中将大は起死回生、来季へ延命か

  4. 9

    高市早苗氏の“戦意”を打ち砕く…多くの国民からの「石破辞めるな」と自民党内にそびえる「3つの壁」

  5. 10

    「U18代表に選ぶべきか、否か」…甲子園大会の裏で最後までモメた“あの投手”の処遇