北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「暗殺者の飛躍(上・下)」マーク・グリーニー著、伏見威蕃訳

公開日: 更新日:

 すごいすごい。もうくらくらである。

 フリーのヒットマン、コート・ジェントリーを主人公とするシリーズは、「暗殺者グレイマン」「暗殺者の正義」「暗殺者の鎮魂」「暗殺者の復讐」「暗殺者の反撃」という5部作で、第1期が完結した。本書から始まるのは第2期である。すべてリセットした上での新スタートであるので、これまでの5部作を未読の方はここから読み始めることをぜひおすすめしたい。

 中国サイバー戦部隊の天才ハッカー茫が逃亡するのが物語の幕開けだ。アメリカは当然、茫を生きたまま捕らえることを目標に、コート・ジェントリーを派遣する。ちなみに、ジェントリーはCIA局員ではない。依頼を受けて香港へ飛ぶ。中国人民解放軍の保全・防諜部部長の戴は、茫を抹殺するために特殊部隊を指揮して追いかけてくる。そこに絡んでくるのがロシア対外情報庁。アメリカもロシアも、台頭する中国を叩くために茫を必要とするのだ。この三つ巴だけでも大混乱なのに、香港、ベトナム、タイの犯罪組織がカネのにおいをかぎつけて絡んでくる。もうぐちゃぐちゃである。

 このシリーズは、畳みかけるアクションの量と迫力で、冒険小説ファンの心を掴んだが、本書も例外ではない。息詰まるアクションがこれでもかこれでもかと展開するのだ。いやはや、すごい。グリーニー、相変わらず絶好調だ。

 (早川書房 各860円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗