著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「地獄の犬たち」深町秋生著

公開日: 更新日:

 凄まじい小説だ。帯に「先鋭化した暴力団に潜入した警官」とあるので、潜入ものであることは最初から明らかにされている。となると、その正体がいつ露見するのか、そういうサスペンスが中心になっていくのかと思うところだが、そんなことはどうでもよくなってくるほど、エグい場面が頻出する。

 なにしろ、潜入捜査官兼高昭吾が弟分を連れて沖縄へ飛び、ターゲットを惨殺するところから始まる小説なのである。さすがに兼高昭吾は一人になってから、激しく嘔吐するが、慣れというのは恐ろしく、そのうちに兼高昭吾は嘔吐もしなくなる。つまり、正体が露見するのかしないのか、ということは本書の場合、たいした問題ではない。もっと違うことが問題になるということだが、ネタばらしになるのでこれ以上の紹介は控えたい。

 物語の表層で語られるのは暴力団内部の激しい抗争で、その殺戮と拷問と陵辱が凄まじく、思わず目を背けたくなる。だが、兼高昭吾は何のために潜入したのかという目的がなかなか知らされないので、その真実を知りたくてページを繰ると、やがて明らかになり呆然。ホントかよ。

 深町秋生は、「果てしなき渇き」で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して2005年にデビューした作家なので、その登場からもう12年になる。これまでにもさまざまな作品を書いてきたが、本書は深町秋生が新たなステージに向かう記念碑的な作品だ。(KADOKAWA 1600円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 2

    川口春奈「食べ方が汚い」問題再燃のお気の毒…直近の動画では少しはマシに?

  3. 3

    あの人「なんか怖い」を回避する柔らかな言葉遣い

  4. 4

    自分探しで“変身”遂げたマリエに報道陣「誰だかわからない」

  5. 5

    (1)高齢者の転倒は要介護のきっかけになりやすい

  1. 6

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 7

    「誰が殺されてもおかしくない」ICE射殺事件への抗議デモ全米で勃発

  3. 8

    解散総選挙“前哨戦”で自民に暗雲…前橋出直し市長選で支援候補が前職小川晶氏に「ゼロ打ち」大敗の衝撃

  4. 9

    業績悪化で減収減益のニトリ 事業の新たな柱いまだ見いだせず

  5. 10

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網