ミー・トゥー後のフェミニズム

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「存在しない女たち」キャロライン・クリアド=ペレス著 神崎朗子訳

 かつてなく女性やマイノリティーを閣僚に起用したバイデン米政権。「ミー・トゥー」運動の成果は上がったのか。



 著者は、ベストセラーになった本書で「データをたずさえたボーボワール」と呼ばれているという。ボーボワールといえば「第二の性」で女性解放に先鞭をつけた思想家。つまり本書はデータ(証拠)をずらりとそろえた現代のフェミニズムというわけだ。

 たとえばイギリスではバスの車内に監視カメラが備えられているが、実はレイプや強盗など女性を狙った犯罪は監視の手薄なバス停でのほうが多い。また米空軍がパイロットに支給するセンサー付きのベストは男より脂肪の多い女には不向き。つまり「平等」のタテマエで女性も社会に進出しているが、実は男目線でしか世の中はできあがってない。そういう実態を種々の実例で明らかにしたのが本書なのだ。

「男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く」という副題は、そのまま本書のコンセプトを表している。意外なことに現代の典型的なホームレスは「25~34歳の若い女性で、子どもがいる場合も多く、暴力から逃げてきたケースが増加している」という。ホームレスは中年以上の男というのも先入観なのだ。

 著者はブラジル生まれで英国籍のジャーナリスト兼活動家。

(河出書房新社 2700円+税)

「キングコング・セオリー」ヴィルジニー・デパント著 相川千尋訳

 フランスで話題になった戦闘的フェミニストの本。17歳でレイプされ、みずから売春した経験もある。普通の仕事なら何時間も働かないといけない金がたった2時間のセックスワークで手に入る。その“喜び”をあけすけに語る。

 35歳でレズビアンになり、アメリカで「ミー・トゥー」運動が起こるとフランスで真っ先に共鳴の動きを起こした。男支配に悪態をつき、卑語猥語もへっちゃら。多くの運動家は性被害の話はしても、セックスそのものやポルノの話は避けがちだが、本書は違う。

 自分は「誰も妻にしたり、一緒に子どもをつくったりしないタイプの女。常に自分自身でありすぎる女」つまり「キングコングみたいな女」だと冒頭で宣言するとおりだ。

(柏書房 1700円+税)

「さよなら、男社会」尹雄大著

「キングコング・セオリー」が戦闘的な女の宣言なら、こちらは「男性性を脱ぎ捨てた男」による宣言の書である。

 著者はこれまで1000人以上の政財界人、アーティスト、アスリートにインタビューしてきた。しかし近年は一般人を相手に「インタビューセッション」をすることが多い。相手の話を“話の通り”に耳を澄まして聞く方法だ。

 このセッションの相手は9割が女性。実は男たちは女の話を聞くとき、細部をしっかり聞いて論理を理解せずに「ちょっと感覚的すぎてわからない」「それは君の主観でしょ?」などという。これは体のいい拒絶だ。または「やっぱり女性ならではの気づかいや、こまやかさがあるね」というのも褒め言葉というより「女性は感覚的」という通念からくる決めつけなのだという。

 著者はこれまで男たちが「都合のいい妄想」に逃げこんできたと指摘。男性性から抜け出すことが男にとっても再生の契機になるだろう。

(亜紀書房 1400円+税)

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