著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

「本でした」又吉直樹、ヨシタケシンスケ著

公開日: 更新日:

「本でした」又吉直樹、ヨシタケシンスケ著

 書店は時代を映す鏡だなと働いているときに思うことが多々ある。一時期はコロナにまつわる本が平積みされ、またある時期では特定のコメンテーターがメディアに出ていると、その人物の書いたビジネス書や新書が並ぶ。そういうはやり廃りももちろんあるのだが、時代に合わせた世間のアップデートも感じられるのも面白いところだ。

 例えば児童書、絵本の棚を見てみる。少子高齢化で厳しい業界だと思われるかもしれないが、実はここ10年ぐらいで「大人も楽しめる絵本、児童書」が出現し、子どもを持たない女性や男性のお客さまも買っていく流れがある。その中でも頭一つ抜けて人気があるのが絵本作家ヨシタケシンスケさんだ。

 ヨシタケさんが最初にメガヒットを飛ばし、「MOE絵本屋さん大賞」を取ったデビュー作「りんごかもしれない」は子どもがテーブルの上にあるりんごを発見してふと「これはぱっと見はりんごだけど、りんごじゃないかもしれない……」と考え込むところから始まる。もしかしたら大きなサクランボの一粒かもしれないし、皮の中には機械がぎっしり詰まっているかもしれないなど、大人でもハッとするようなユニークな視点や哲学的なテーマがたくさんの世代に受け入れられた。

 また文芸の棚を見ると文芸賞のアップデートも見て取れる。芥川賞や直木賞の候補にミュージシャンやタレントが入ることも珍しくなくなった。特にセンセーショナルだったのがお笑いコンビ、ピースの又吉直樹さんの芥川賞受賞だろう。お笑い界隈だけでなく、小説好きにも又吉さんのファンは多い。

 本作はそんな時代のアップデートを担った2人の共著である。ある村に現れた2人の男はどんなにボロボロになった本でも特殊な技術で元に戻す。1行だけ、タイトルだけ、そんなちょっとした情報さえあれば彼らは復元できるのだ。この本には彼らが直したごく短い物語が多数収録されている。感動、驚き、恐怖など物語のジャンルは多種多様。1ページで終わるものもあるので、普段読書に時間をさけない人にもオススメだ。

 普段は絵本とかお笑いの本とか買わないよ。そんなあなたも少しアップデートしてこの本を手にとってはいかがだろうか。 (ポプラ社 1760円)

【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    一度は行ってみたい世界遺産、飛鳥・藤原の宮都を知る本特集(2)遺跡から浮かび上がる古代人の日常

  2. 2

    女3人で「姦」、では、男3人「𪟧」は何と読む?「辞典には載っていない絶滅漢字図鑑」竹澤雅文(拾萬字鏡)著

  3. 3

    一度は行ってみたい世界遺産、飛鳥・藤原の宮都を知る本特集(3)失われた宮都の景観をCGで再現

  4. 4

    一度は行ってみたい世界遺産、飛鳥・藤原の宮都を知る本特集(4)古代日本の礎を築いた6人8代の女性天皇

  5. 5

    「すすきの近くの喫茶店でバイトしていたときに経験したのことを膨らませた物語です」──「HOTEL NIGHTHAWKS」小路幸也氏

  1. 6

    (65)扇の緑の松がちらちら見え隠れ

  2. 7

    当事者視点から学ぶ規格外を排除する社会の病「認知症の進行を早める生活、遅らせる習慣」丹野智文、恩蔵絢子著/中央法規出版(選者:稲垣えみ子)

  3. 8

    一度は行ってみたい世界遺産、飛鳥・藤原の宮都を知る本特集(1)飛鳥はなぜ宮都に選ばれたのか

  4. 9

    こころの本屋(豊島区・東長崎)「自分の盛大な積ん読本というか『読みたい』と思った本を仕入れています」

  5. 10

    「その犬をください」逢坂冬馬著│明治から令和までの人間と犬の姿を描く連作集

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元プリンセス プリンセス渡辺敦子さんは音楽ダンス学校の校長に 出身者には元乃木坂の白石麻衣も

  2. 2

    紅白出場が確実視されるM!LKは「ソロ活動」増量中 塩崎太智に続く期待のメンバーとその“鬼門”

  3. 3

    高知・土佐清水市の足摺海底館が解体へ…1年での取り壊しもある登録有形文化財の中途半端な文化的価値

  4. 4

    工藤公康さん 人生のターニングポイントは4回「高校進学で人生が変わった」

  5. 5

    簗農相の「更迭」に手間取る理由…与野党のどこの誰が反対しているのか

  1. 6

    簗農相続投で炎上止まらず、自民党内からも批判噴出…高市首相の「アンケート」が完全裏目に

  2. 7

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  3. 8

    timelesz会見で注目された篠塚大輝の成長 アンチも認めた“完璧な”振る舞い

  4. 9

    不振続く和久田麻由子「news LOG」 M!LK曽野舜太の出演は「毒まんじゅう」か「良薬」か

  5. 10

    一部メディアの「中日次期監督に権藤博待望論」に私本人が答えよう 87歳の今も体は元気だが…