満席状態が続く 時節柄「日本のいちばん長い日」がヒット中
今夏は映画が熱い。劇場も熱気がある。話題作が充実し、どのシネコンもすごく賑わっているのだ。最大のヒットは「ジュラシック・ワールド」。スピルバーグ監督の往年の名作「ジュラシック・パーク」の神通力が何といっても強い。
一方、名だたる邦画や洋画の娯楽大作の中で大健闘しているのが「日本のいちばん長い日」。上映館数や上映回数があまり多くないので、トータルの成績ではそれほどでもないが、各シネコンでは満席状態が続いている。
昭和天皇と鈴木貫太郎首相、そして阿南惟幾陸相を中心に70年前の戦争終結時の“いちばん長い日”を描く。戦後70年の記念作品ということもあって年配者が多く詰めかけている。これは安保法案を巡る現在の政治状況も影響していると感じる。
戦争をどのように終結させるか。戦争開始の宣言をした(開戦の詔勅)のが天皇だったように、それを終結させたのも天皇。終結をめぐる非常に切迫した陸軍などの動きは結果的に天皇が治める。
大部分の観客からすれば、それは別段、目新しい歴史上の視点ではないかもしれない。だが、節目の今年、改めて戦争終結のありように接してみることで観客はひとつのおごそかな儀式に参加するかのような思いがあった気がしてならない。