著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

「遥かなる秋のエイティーン」三上幸四郎著

公開日: 更新日:

「遥かなる秋のエイティーン」三上幸四郎著

 私は現在2つの書店で働いている。そのうちの1つが未来屋書店だ。主にイオンに入っている書店グループなので買い物のついでに寄ったことがある人も多いだろう。

 イオンの中にあるからこそ「お客さんを巻き込んでのイベントがやりやすい」というメリットがある。基本書店という場所は狭いのだが、イオンの共有スペースが使える。そこで著者イベントが行えるのだ。

 先日も板橋店で私と第69回江戸川乱歩賞受賞作家の三上幸四郎さんとのトークショーとサイン会が開催された。三上さんは脚本家でもあり、ドラマ「特命係長只野仁」やアニメ「名探偵コナン」など多方面で活躍されているのでさまざまなお話が聞けて私もお客さまも大満足のイベントになった。今回はそんな三上さんの最新長編を紹介したい。

 本書は主人公の女子中学生、遥佳が新宿・歌舞伎町のハロウィーンに参加しているところから始まる。ひょんなことから悪漢に追いかけられた遥佳を助けたのは同じ年頃の少年、夕真。彼は毎年秋の始まりに現れ、秋の終わりと共に去る。失踪とかではなく物理的に「消失」するのだ。近年の猛暑でどんどん短くなる日本の秋。出会って以降毎年そのわずかな期間しか会えない遥佳と夕真。そもそもなぜ夕真はこのような特殊体質になってしまったのか。謎は思いがけないところから解かれていく。

 かなり直球な青春SF。それでいてさすが乱歩賞作家とうならせるミステリーパートが中盤以降押し寄せてくる。

 序盤、遥佳がVTuberとして配信を始めることになるのだが、過疎気味だった視聴者数がどんどん変化していくところは現代的な青少年の成長の見せ方だなと感じた。

 ちなみに本書では漢字のルビが平仮名ではなくカタカナ英語になっている箇所がある「倍速」に「ダブル・スピード」、「集合体」に「アグリゲート」など。これは著者が敬愛しているとあるSF作家へのリスペクトが入っているとトークショーで聞けた。それぐらいSF愛があり、かつ名探偵コナンの脚本も書いているからこその躍動感のある青春ミステリー。著者の強みが存分に生かされている。

 人生における10代の日々の尊さを改めて教えてくれる老若男女にオススメの一冊だ。 (講談社 2420円)

【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍J大谷翔平が完全非公開&厳戒態勢の神宮球場でライブBP! 背景にドジャース側からの情報統制か

  2. 2

    高市首相が石川県知事選の敗北にブチ切れ! NHK調査でも内閣支持率が下落…人気低下の兆しに隠せぬ「焦り」

  3. 3

    5199万円で競売にかけられる神戸山口組、井上組長の自宅

  4. 4

    「リブート」で“覚醒”した永瀬廉が主演映画にかける切実事情 キンプリは“分裂3年”で「Number_i」と大きな差

  5. 5

    前園真聖が番組収録中の大ケガで手術…地方路線廃止と出演者高齢化で迎える「バス旅」の転換期

  1. 6

    3.11から15年 高市首相の大暴言「原発事故での死亡者はいない」を風化させるな!追悼式も「行けたら行くわ」福島軽視の冷酷

  2. 7

    「キンプリ」ついに解散状態へ! 永瀬廉の「個人FC」設立と「キントレ」終了の因果関係

  3. 8

    そもそもWBCってどんな大会?日本がMLBの“金ヅル”から脱却できない意外な事情

  4. 9

    国会で、SNSで…「高市早苗の嘘八百」はこんなにある!女性初首相は“真っ黒け”なのに手ぬるい野党の追及

  5. 10

    侍J野手に「8秒」の重圧 1次R3試合無安打の近藤健介を直撃すると…