「滝の白糸」で難役 背中の壱太郎&セリフの松也の芸達者

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 さらに、松也の役も難役だ。最後は自決するのだが、その場面、彼は舞台にいない。舞台には「自決した」と知らせが来るだけなのだ。松也は、舞台から去る直前の長いセリフを通して、数分後の自決を観客に納得させなければならない。これも普通の歌舞伎にはない演技が問われる。

 そういう歌舞伎的ではない演出で、なおかつ悲しい結末なので、客席は少し戸惑っている感じでもあったが、これは傑作である。

 滝の白糸が倒れたところで何の余韻もなく幕が下り、歌舞伎だからカーテンコールはない。最近の映画はエンドロールが何分も続くが、「Fin」と字幕が出るだけの、昔のフランス映画みたいな幕切れは、この芝居にふさわしい。

 (作家・中川右介)

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