「濹東綺譚」 若い女への情愛に揺れる…“大人のメルヘン”

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 荷風は58歳の初老の男。「あと10年若かったらなぁ」と嘆息する。お雪は借金のために売られた25歳。不幸だが気立てが優しく、けなげな明るさを放っている。だから荷風は彼女に引き込まれる。そう考えると本作は大人のメルヘンだ。

 現代の中高年男性もお雪のような女と出直したいと思っているだろう。だが加藤茶でもないかぎり、親子以上に年が離れた女の人生を保証できない。だから文豪の荷風も悩むことになる。

 新藤監督は原作にない置き屋の女将(乙羽信子)を設け、愛息が戦死するなど日中戦争の悲劇を盛り込んで物語に奥行きを出した。古き時代の色街のたたずまい、お雪の伝法な物言い、荷風が呟く文学的独白など戦前の風情が存分に表現されている。林光による音楽も秀逸。男と女のほろ苦い結末が胸に染みる。

(森田健司)

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