おおたわ史絵さんに聞く 刑務所で受刑者の診療をする理由

公開日: 更新日:

 私と父がその事実に気づいた頃には時は遅く、依存はまったく止めることができない状態になっていました。止めても叱っても、父の医院の薬棚から薬を探し出して自分で打ってしまいます。彼女は元ナースでしたから、それも悪く手伝ったのでしょう。

 依存者は嘘や恫喝、暴言など、ありとあらゆる手段で対象物を手に入れようとします。相手が夫であろうと愛娘であろうと関係ありません。それほどまでに脳が支配されているのです。

■家族のための避難施設に父と一緒に逃げたことも

 もちろん薬物専門医の外来相談に行きました。本人を入院させたこともあります。まったく効果はありませんでした。薬物問題を抱える家族会にもつながりました。途中からは注射薬を与えないと父に暴力を振るうまでになっていましたから、家族のための避難施設に父と一緒に逃げたこともありました。

 結局、母の薬物依存は父が亡くなるまで続き、父の死と引き換えに、医院から薬物を入手できなくなった母は、一時的に依存から脱却したかのように見えました。これでやっと終わりなのか……? と思ったのもつかの間、彼女の症状は買い物依存に形を変えてぶり返したのです。依存症には相互関連があり、アルコール、ギャンブル、暴力、薬物、セックスなど他の依存を生じやすいのです。母の場合は買い物でした。通販で注文した使いもしない商品が段ボールで毎日、何箱も届きました。ひどい時は箱を開けもしません。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  4. 4

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  5. 5

    timelesz篠塚大輝“炎上”より深刻な佐藤勝利の豹変…《ケンティとマリウス戻ってきて》とファン懇願

  1. 6

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”女性議員ついに書類送検! 野党支持率でトップ返り咲きも玉木代表は苦悶

  3. 8

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  4. 9

    波瑠のゴールインだけじゃない? 年末年始スクープもしくは結婚発表が予想される大注目ビッグカップル7組総ざらい!

  5. 10

    アヤックス冨安健洋はJISSでのリハビリが奏功 「ガラスの下半身」返上し目指すはW杯優勝