おおたわ史絵さんに聞く 刑務所で受刑者の診療をする理由

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 私と父がその事実に気づいた頃には時は遅く、依存はまったく止めることができない状態になっていました。止めても叱っても、父の医院の薬棚から薬を探し出して自分で打ってしまいます。彼女は元ナースでしたから、それも悪く手伝ったのでしょう。

 依存者は嘘や恫喝、暴言など、ありとあらゆる手段で対象物を手に入れようとします。相手が夫であろうと愛娘であろうと関係ありません。それほどまでに脳が支配されているのです。

■家族のための避難施設に父と一緒に逃げたことも

 もちろん薬物専門医の外来相談に行きました。本人を入院させたこともあります。まったく効果はありませんでした。薬物問題を抱える家族会にもつながりました。途中からは注射薬を与えないと父に暴力を振るうまでになっていましたから、家族のための避難施設に父と一緒に逃げたこともありました。

 結局、母の薬物依存は父が亡くなるまで続き、父の死と引き換えに、医院から薬物を入手できなくなった母は、一時的に依存から脱却したかのように見えました。これでやっと終わりなのか……? と思ったのもつかの間、彼女の症状は買い物依存に形を変えてぶり返したのです。依存症には相互関連があり、アルコール、ギャンブル、暴力、薬物、セックスなど他の依存を生じやすいのです。母の場合は買い物でした。通販で注文した使いもしない商品が段ボールで毎日、何箱も届きました。ひどい時は箱を開けもしません。

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