おおたわ史絵さんに聞く 刑務所で受刑者の診療をする理由

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 この頃の私は終わりの見えない戦いに完全にまいっていましたね。母の問題と正面から向き合う意欲も情熱も、すっかり消えてしまっていました。半ば無視、放置するように見て見ぬふりを通していたある日、母は自室で独りで病死しました。5年前の秋、第一発見者は私でした。反射的に心臓マッサージをしたのを覚えています。あんなに嫌な思い出しかなかったはずの母親なのに、不思議なものですね。今でも脳裏をよぎる記憶の中の母は薬物で人格を破壊され、酷い出来事ばかりです。

 でも、それもすべては依存症のせいだったのでしょう。依存さえなければ、まったく違う幸せな人生が送れたかもしれない……。

 そんな折、法務省から矯正医療のお話をいただきました。薬物や盗み、暴力などの依存の医療に携わる場所は、私にとって別世界と思えませんでした。依存症は刑罰や拘束で解決するものではありません。法と医で力を合わせて取り組むべき問題です。そしてそれこそが、再犯防止へのたった一つの道だと考えています。

 誰もが「再犯を止めるのはまず不可能だよ」と言います。おっしゃる通り。でも、100人だめでも、もしかしたら101人目には何か伝わるかもしれない。一人くらいは変わるかもしれないじゃないですか。それを目指して腰を据えてやっていくつもりです。

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