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片岡たまき

神奈川県平塚市出身。元RCサクセション・マネジャー兼衣装係。夫は「パスカルズ」のバンドマスター、ロケット・マツ氏。著書に「あの頃、忌野清志郎と」(宝島社)。

高尾霊園の墓前に染み入る 二胡の「ブラームスの子守唄」

公開日: 更新日:

 忌野清志郎は東京都下、高尾山の麓にある「高尾霊園・高乗寺」に眠る。2010年に墓が完成し、訪れるファンは絶えない。1980年代のRC時代と、ソロになった清志郎の晩年、スタッフを務めた片岡さんが語る。

「70年代半ば、清志郎さんは高校時代の失恋をモチーフに『お墓』というタイトルの曲を作っています。『ぼくはあの街に 二度と行かないはずさ ぼくの心が死んだところさ そしてお墓が建っているのさ――』。失恋という出来事を『心が死んだ=お墓』と表現した。強い言葉を選んで、繊細な心境を表す。このような歌詞の描き方が、清志郎さんの非凡さです」

 高尾山の広大な霊園の一角、他とは一線を画す個性的なデザインが目を引く清志郎らしい墓だ。

「お墓というよりも、小さなモニュメントのよう。墓石には『忌野清志郎』の直筆文字。玉石が敷かれた隅には腰かけ石があって、ここに座ってボーッと、清志郎さんを思い出したりします」

 日の当たる屋上のような居心地のよさに違いない。

「数年前、お墓参りで清志郎さんのスタッフと、清志郎さんの幼なじみでRCのベーシストだったリンコさん(小林和生)とご一緒したことがありました。リンコさんは現在、中国の弦楽器二胡を教えているのですが、車から二胡を取り出して1曲、清志郎さんに聴かせました。清志郎さんもレコーディングをしたことのある『ブラームスの子守唄』でした。清志郎さんのお墓は、お線香立てにお線香を上げることが許可されていないので、リンコさんは自作した線香板を『いつも持ってくるんだ』と。それにお線香を載せて火をともしていました。二胡の澄んだ切ない音色と、わざわざ用意されたお線香板に胸が熱くなりました。私は、初期RCから40年来のファンですが、この時は、ファンになった頃の空気感が一瞬にして去来した。中学生の頃に憧れたRCのメンバーが、旅立ってしまった清志郎さんの墓前で曲を聴かせている。感無量でした。リンコさんは自作のブレスレットを墓前に置いて、『新作を作ったんだよ』と清志郎さんに見せました。曲が終わると、リンコさんは『清志郎にも見せたから』って、私にプレゼントしてくれました。『これは、たまきが持ってるといいよ』と。時空を超えた感覚がして、最高のプレゼントでした」

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