著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

3・11から7年…「Fukushima50」製作発表が意味すること

公開日: 更新日:

 今年の日本映画界10大ニュースのひとつに入ると思う。2011年3月に起こった福島第1原発の事故を描く映画「Fukushima 50」(松竹、KADOKAWA配給)の製作が発表されたことである。待望久しかった。この題材は日本映画界にとって、避けてはならない大きなチャレンジと常々考えていたからである。

 映画は事故後、原発に残って決死の作業に携わった約50人の話を中心にとらえる。原作は、門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」だ。監督は「沈まぬ太陽」を手がけた若松節朗。1、2号機原発の当直長を佐藤浩市、よく知られた吉田所長は渡辺謙が演じる。題材の骨格、監督起用、俳優の布陣ともに申し分がない。

 今、日本の邦画大手はスケールの大きな社会派問題作をあまり作らなくなっている。ヒットするかどうか分からないといった興行上の問題もあろう。ただ総じて、あまり厄介な題材には立ち入らないほうがいいという消極的な姿勢が強いような気もするのである。

 日本映画には輝かしい社会派問題作の系譜がある。かつての映画人は貪欲に、過去や現在のさまざまな政治的、社会的な問題を扱い、悪戦苦闘してきた。昨今、その伝統がぷっつり切れてしまっている。日本映画は、その領域に果敢に踏み込むべきではないのか。そう思っていた矢先の「Fukushima 50」製作のニュースだった。

 もちろん、本作でやれることは限られるとは思う。ただ大震災から7年目にして、原発事故を本格的に描こうという邦画大手が現れてくれた。うれしいことではないか。どこまで、被災者、当事者の想像を絶する行動と心根に寄り添えるか。成功を祈る。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    梅宮アンナ「10日婚」短期間で"また"深い関係に…「だから騙される」父・辰夫さんが語っていた恋愛癖

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 5

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  1. 6

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  2. 7

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  5. 10

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅宮アンナ「10日婚」短期間で"また"深い関係に…「だから騙される」父・辰夫さんが語っていた恋愛癖

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  4. 4

    山本舞香は“ヤンキー”より“令嬢”がハマる?「波うららかに、めおと日和」《ふかふみコンビ》で人気急上昇

  5. 5

    元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  2. 7

    中川翔子「Switch2転売購入疑惑」を否定も火に油…過去の海賊版グッズ着用報道、ダブスタ癖もアダに

  3. 8

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  4. 9

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る