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大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

東宝期待2作品がまさかの空振り…「正月興行」に異変アリ

公開日: 更新日:

 今年しょっぱな、映画界にちょっとした異変が起きた。常勝会社の東宝が、正月興行で東映の後塵を拝したのだ。東映がヒット作を2本連発したのに対し、東宝は期待の実写作品2本が空振りに終わった。 

 東映の2本が、なかなかに凄い。「ドラゴンボール超(スーパー)ブロリー」(18年12月14日公開)がすでに興収37億円を超え、40億円近くが見込まれる。「仮面ライダー」の新作は、正月興行では同シリーズ歴代2位となる15億円超が狙える。中身に工夫を凝らし、決してマンネリ化にならないような配慮が施されている点が高い支持につながった。 

 一方の東宝の空振りの2本とは「来る」と「ニセコイ」だ。筆者は、時代の暗部をさらけ出した「来る」の野心的な製作姿勢を評価した。が、一般の人たちは作品が秘めた野心など関係ない。面白いかどうかの判断が映画を見る決め手だ。当たり前のことだが、「来る」はそこに引っ掛からなかった。「ニセコイ」は、人気コミック原作のラブコメの限界を示した。どちらも10億円に届かない。

 東映には新たな朗報も入ってきた。先の「ドラゴンボール超――」が、北米の興行で邦画としては、異例の大ヒットを見せたのだ。もともと「ドラゴンボール」は世界的に人気が高いが、今回は何といっても作品の出来栄えが素晴らしい。世界が壊れるかのような怒涛のバトルシーンと、主要キャラクターのたけり狂った表情のアップが実に繊細に交差する。世界の観客も、日本のアニメの威力に度肝を抜かれることは間違いない。

 さて、東映に注文である。かつて東宝は、「ドラえもん」や「名探偵コナン」などの定番アニメを基軸にした上で、実写作品を充実させて、映画界トップの地位を築いた。東映も、これにならうべきだろう。基軸はできつつあるのだ。実写作品の製作、配給の戦略を抜本的に変える。そう、今がチャンスだ。

【連載】大高宏雄の「日本映画界」最前線

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