甲子園の“勝ち歌”新定番歌う アーティスト成底ゆう子に聞く

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 2月には鳥取・湯梨浜町に招かれてコンサートを行った。初めて足を踏み入れた縁遠い土地。事務所に届いた一通のメールがキッカケだった。

「公式ホームページのコンタクト欄に『鳥取・赤崎の幼稚園で園児たちがダイナミック琉球を歌い、踊っている姿に感動しました。ホンモノの歌を聴かせてやりたいと思いました。ぜひ鳥取にお出で下さい』といった内容のメールが届きました。鳥取・倉吉で沖縄料理店を営んでいる谷本安広さんからでした。山陰ではインストアライブもプロモーションもやってないのに……と正直驚きましたが、谷本さんの熱い思いを心を動かされ、鳥取に向かいました。コンサートには多くの人に足を運んでいただき、本当に嬉しく思いました。そしてコンサート翌日に西倉吉幼稚園と赤崎こども園に行ったのですが、赤崎では年長さんがサプライズで踊りまで披露してくれ……もう号泣してしまいました。子どもたちの<まっすぐな心>が<大人たちを動かす>ことの素晴らしさを実感しながら『ダイナミック琉球を歌うことになった<縁>をこういった形で繋いでいくことが<恩返し>になるんだな』と改めて思いました」

 ーーそもそもダイナミック琉球との出会いは、メジャーデビュー前の2009年だった。この曲の作詞を担当した平田大一氏(演出家・脚本家)から「ぜひ歌って欲しい」という依頼が届いた。しかし、作曲者であるイクマあきら氏自ら歌うダイナミック琉球が「とても男っぽくて荒々しい歌なので私に歌えるのでしょうか?」と逡巡した。

「大学(武蔵野音大)で学んだ声楽ではダイナミック琉球を“料理”できそうにないし、これまで歌ってきた<成底ゆう子の世界観>ともまったく違う。私が歌っていいものか、もの凄く悩みました。でも本番で歌ってみたら、雷に打たれたような感覚に襲われ、涙が止まりませんでした。メジャーデビューするまでの挫折など悩みも多かったのですが、歌った瞬間に『私はシマンチュ(島人=沖縄人という意)なんだ。自分らしく生き、自分らしく歌えばいいんだ』という思いが溢れ出してきました」

 ーー2004年にインディーズで初アルバムをリリース。2010年11月に“誰もが泣ける歌”と言われる名曲「ふるさとからの声」(2008年のアルバム「この地球(HOSHI)に生まれて」に初出)でキングレコードからメジャーデビュー。翌2011年にメジャー初アルバム「宝~TAKARA~」をリリースし、ここに「ダイナミック琉球」が収められた。

「どうしても『この曲をアルバムに入れて下さい』と言い張りました。周囲の反応ですか? 正直に言ってドン引きでしたね。でも、この曲こそが『私を正しい道に導いてくれる』と確信めいたものを感じていましたので一歩も引き下がりませんでした」

 ーー2019年春の選抜大会が行われている甲子園に直接出向き、大会初日から5日目の第1試合まで「一回戦をすべてスタンドから観戦」した。

「大会2日目の第一試合で日章学園(宮崎)が六回、八回、九回と3度やってくれました。とてもクオリティーの高い演奏でした。大会5日目には松山聖陵と桐蔭学園が歌ってくれました。演奏が始まると口ずさむ人も昨年より多くなったように思います。ダイナミック琉球は、試合後半に歌われることが多いのが特徴です。後半になって試合が動くことも多く、チャンステーマとして選手とアルプススタンドがひとつになれるような歌に成長していってくれることを願っています」

 ーー2018年の夏を過ぎると「ぜひ紅白歌合戦で歌って欲しい」「今年の紅白歌合戦で1番聴きたい曲」など紅白出演を期待する書き込みが急増した。また「2020年の東京オリンピックで世界中に<日本人の魂>を現す歌として歌って欲しい」といった書き込みを目立ってきている。

「小さい頃、石垣島のテレビには民放がなくてNHKだけでした。今でも<NHKの紅白に出場する>というのが、歌い手として成功を収めたかどうかーーのバロメーターになっています。紅白で歌うことができれば、アジアの人たち、世界中の人たちにダイナミック琉球を聴いてもらえるでしょう。私自身、たとえば2020年東京五輪の<日本の応援歌><日本の勝ち歌>になってくれればいいな、と思っています。そして<アジアの人を応援する歌>となり、さらには<世界中がひとつになれる歌>になってくれたら、こんなに嬉しいことはありません」

  ◇  ◇  ◇

 3月13日にキングレコードから「ダイナミック琉球~応援バージョン~【歌おう踊ろう盤】(CD+DVD)がリリースされた。

「サイン会などで子供連れのファミリーの方たちから『運動会で歌っています』『学芸会で踊っています』といった声を多く聞きました。もともと構想にあった<キッズ・バージョン>として出すことになりました」

【ライブ情報】
4月27日「ダイナミック琉球~あやぱにの舞~」大阪・南堀江knave 会場午後5時 チケット4800円

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