著者のコラム一覧
平野悠「ロフト」創業者

1944年8月10日、東京都生まれ。71年の「烏山ロフト」を皮切りに西荻、荻窪、下北沢、新宿にロフトをオープン。95年に世界初のトークライブ「ロフトプラスワン」を創設した。6月、ピースボート世界一周航海で経験した「身も心も焦がすような恋」(平野氏)を描いた「セルロイドの海」(世界書院)を刊行。作家デビューを果たした。

村下孝蔵さん「このまま広島に帰るわけには」と酒をあおり

公開日: 更新日:

 どんどん時間が押していき、村下さんの持ち時間がなくなってしまった。現場の仕切り屋から「彼の出番はありません」と言われて「はい、そうですか」と引き下がるわけにもいかない。とはいえ「時間が取れない」という現実にあらがうこともできず……村下さんの落胆は大きかった。その日の夜、2人で居酒屋の片隅で痛恨の酒を何杯もあおった。彼はガックリ肩を落としながらこう言った。

広島の音楽仲間から盛大な激励会を開いてもらった。このまま東京で何もしないで帰るわけにはいかない」

 新宿ロフトのブッキング担当に「村下さんのライブを突っ込んでくれ」と連絡し、何とかステージに立ってもらったものの、ささやかな東京デビューとなってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 彼は83年にリリースした5枚目のシングル「初恋」、同年8月の6枚目のシングル「踊り子」で大ヒットを飛ばし、一躍フォーク界の寵児となった。彼の透き通った歌声がヒットチャートを駆け上がりながら、全国津々浦々で聞こえてくる。もううれしくてうれしくてひとりで何度もバンザイしたことを覚えている。

 もしかなうことなら、もう一度、村下さんと酒を酌み交わしながら渋谷での不手際を謝り、そして「歌謡曲、ロック全盛の時代にフォークのスピリッツを貫き通した。渋谷での屈辱をバネによく頑張った」と声をかけたい。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    2度不倫の山本モナ 年商40億円社長と結婚&引退の次は…

  5. 5

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  1. 6

    女子プロレス転向フワちゃんいきなり正念場か…関係者が懸念するタレント時代からの“負の行状”

  2. 7

    学歴詐称問題の伊東市長より“東洋大生らしい”フワちゃんの意外な一面…ちゃんと卒業、3カ国語ペラペラ

  3. 8

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  4. 9

    Perfumeのっち、大学中退話が地上波TV解禁でファン安堵…「ネタに昇華できてうれしかった」の反応も

  5. 10

    福山雅治の「不適切会合問題」で紅白に地殻変動が? “やらかし”がPerfume「トリor大トリ」誘発の可能性アリ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘