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伊藤さとり映画パーソナリティー

映画コメンテーターとして映画舞台挨拶のMCやTVやラジオで映画紹介を始め、映画レビューを執筆。その他、TSUTAYA映画DJを25年にわたり務める。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。レギュラーは「伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談&監督対談番組(Youtube)他、東映チャンネル、ぴあ、スクリーン、シネマスクエア、otocotoなど。心理カウンセラーの資格から本を出版したり、心理テストをパンフレットや雑誌に掲載。映画賞審査員も。 →公式HP

映画「リスペクト」で考える日本のジェンダー平等 クイーン・オブ・ソウルが遺し訴えかけるものとは

公開日: 更新日:

クイーン・オブ・ソウル”として知られ、グラミー賞20回受賞、女性初の「ロックの殿堂入り」を果たし、ローリング・ストーン誌では「歴史上もっとも偉大な100人のシンガー」第一位にも選ばれたアレサ・フランクリン。2018年8月16日に76歳でこの世を去った彼女の波乱に満ちた人生がついに映画化。主演にはアレサの推薦によりジェニファー・ハドソンが抜擢され、見事な歌唱力と演技力でアレサ・フランクリンの魂をスクリーンに焼き付けました。

 その映画のタイトル『リスペクト』は、アレサ・フランクリンの大ヒット曲から取られたもので、彼女の幼少期からスターダムにのし上がりながらも夫の暴力やアルコール依存に悩まされた私生活の中で、「公民権運動」や「女性解放」の顔として多くの人々に支持された理由が丁寧に綴られています。

■愛と再生の旅 アレサの壮絶な人生

 では幼少期のアレサはどんな家庭環境だったのか? まず父親であるCL・フランクリンは説教者として名を馳せる牧師であり、母親のバーバラ・シガーズ・フランクリンはゴスペル歌手という生まれながらに歌手としての才能と環境に恵まれたものの母は早くに他界、父親に付き添い、幼い頃からゴスペルシンガーとして教会で歌っていました。

 そんな中、12歳で出産、更には15歳で第二子を出産という未婚の母を若くして経験し、19歳でマネージャーとなったテッド・ホワイトと結婚。その結婚生活の中で「リスペクト」「ナチュラル・ウーマン」などの名曲を世に送り出します。その後、夫の暴力が発覚するなど、まさにアレサの人生は壮絶であり、愛と再生の旅だったようです。

アレサの歌う「女性解放」のメッセージ

 さて、映画のタイトルにもなっている名曲「リスペクト」ですが、黒人歌手オーティス・レディングのオリジナルソングをアレサがアレンジして女性目線で歌い上げたカバー曲です。この曲の歌詞を読み取ると見えてきますが、ヒットの裏には「女性解放」のメッセージが紡がれているのが大きな要因です。

“家で夫を待つ妻に敬意を払って欲しい”と歌い上げ、続くヒット曲「ナチュラル・ウーマン」はキャロル・キングとキングの当時の夫との共同作品ですが、“あなたは私をありのままの女性のような気にさせてくれる”という歌詞で、「ありのままの生き方」を女性もすべきだとも提唱しています。

 では、アレサ自身が最初から強い信念を持つ女性だったのかというと映画はそうではないと伝えています。彼女の父親は過干渉であったため、アレサは親の言いなりの歌い方をしたり、自分に自信を持てずに人生の選択もできない状況だったようです。

 そんな父親と離れるきっかけを与えてくれた愛する人も、蓋を開けると「過干渉」なDV夫だったことから彼女は歌うことで自身の思いや気づきを得たのかもしれません。結果、多くの女性たちに気づきを与えるパワフルソングとして世界中に広まったのだから、そんなアレサと彼女の歌を描いたこの映画も男女平等を強く唱える現代において“伝えるべき映画”であり、エンターテイメントとしてスマートにジェンダー平等を訴える映画なのです。

 そう考えると選択的夫婦別姓や同性婚が今だに認められない日本は先進国でありながら世界に遅れをとっている気もするのですが。

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