著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

五木ひろしの光と影<5>ギター片手に夜の街に出た「流し」の日々

公開日: 更新日:

 所属事務所が倒産し、ポリドールレコードから契約を解除された一条英一も、食うためにギターを片手に夜の街に出た。新宿、赤坂、銀座の居酒屋、クラブ、キャバレーを転々とした。日銭を稼がないと生きていけないのだ。松山まさる時代から演歌調の楽曲を歌ってきたが、酔客の前ではそうも言っていられなかった。思い出したくないこともたくさんあったに違いない。

 筆者も幼児の頃、温泉街で初老の流し歌手に遭遇したことがある。「坊ちゃん、何かリクエストを」と言われ、「宇宙戦艦ヤマト」と言ったら、ギターで見事に歌い切ってくれた。

 このように客の要求にはなんでも応じないと、やっていけないのだ。民謡や演歌だけではなく、ポップスも、フォークも、ジャズも、アニメソングも、ロックンロールさえもこなす必要がある。音感はもちろん、演奏も歌唱力も優れてなくては務まらないものである。

 アマチュア歌手と一緒くたにされながら、酔客のリクエストに応じていくうちに、一条英一の実力はおそらく磨かれていったはずだ。かつては食うに困り、フジテレビの食券を握りしめ、中野のアパートから曙橋のフジテレビまで徒歩で通うくらいの困窮生活だったが、夜の街で歌ううちに、ひとまず脱することができた。馴染みの客からごちそうしてもらうこともあったのだろう。昭和40年代前半、大卒の初任給が1万円という時代に、1日5000円も稼いだというから、暮らし向きだけは好転した。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  3. 3

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  4. 4

    鈴木紗理奈以外にもいた…あのちゃんが過去に口にしていた“キライな芸能人”の実名

  5. 5

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  1. 6

    日本ハムがソフトBに8戦全敗の悲惨…崩壊投手陣が口にする「伏見寅威ロス」

  2. 7

    元サッカー日本代表・大津祐樹さんはビジネスでも成功 年商300億円の高級腕時計会社の社長に

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    DeNAビシエド電撃引退のウラとフロント批判殺到の必然《もうハマスタに行こうとは思わない》

  5. 10

    文科省「教育の政治的中立性」で波紋…なぜ森友学園がセーフで、同志社国際がアウトなのか?