著者のコラム一覧
吉田隆記者、ジャーナリスト

1984年に写真週刊誌「FRIDAY」の創刊準備メンバーとして専属記者契約を結ぶ。87年の大韓航空機爆破事件では、犯人の金賢姫たちが隠れていたブダペストのアジトを特定、世界的に話題となる。初代「張り込み班チーフ」として、みのもんたや落合博満の不倫現場、市川染五郎(現・松本幸四郎)や石原慎太郎の隠し子、小渕恵三首相のドコモ株疑惑などジャンルを問わずスクープ記者として活躍。

<96>精いっぱいの演技か? 早貴被告はハンカチ片手に涙ぐんだ

公開日: 更新日:

 その後、棺桶に釘を打つセレモニーが始まった。私は釘を打つ音を耳にすると故人との本当のお別れであると実感してしまうので、この瞬間が大の苦手だ。

 自分の親族が死んだ時も決して釘を打つことはしなかったので、この時も辞退した。

 最後の釘は喪主の早貴被告が打つことになり、彼女は鼻の頭を赤くしてハンカチを片手に涙ぐんでいたが、私には本気には思えなかった。精いっぱい悲しみの演技をしているようにしか見えなかったのだ。

 その後は、この地方の習慣らしく、お供え物を各自が持って火葬場に行くという手はずを葬儀社の係員から伝えられた。

 お昼の12時ごろ、白いマスクにサングラスをかけた早貴被告が斎場から出てくると、門の外に待ち受けていたマスコミが一斉にカメラを構え、周囲にはシャッター音が鳴り響いた。

 市営の火葬場は炉の型が古いので、遺体が骨になるまで3時間近くかかると聞いていた。火葬場の係員たちは慣れたもので事務的に事は進んでいくが、私はこの場所も苦手だった。炉に入れられれば、お別れである。点火されて炎に包まれるドン・ファンの棺桶を想像しながら、私は怒りの視線を炉に向けていた。

「絶対にオレはこの敵を取ってやる。社長、誓うからね」

 両手を合わせると、私はいったん、火葬場を後にした。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋