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細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

五木ひろしの光と影<15>山口洋子は「今までになかった曲にしたい」と訴えた

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「まあ、そんなに買いかぶられても困るけど、そう思われて悪い気はしなかった」と晩年の平尾は相好を崩した。

 山口洋子は平尾に8編の詞を渡した。すでに「噂の女」(内山田洋とクール・ファイブ)という大ヒット曲を出した、れっきとしたヒット作詞家でありながら、銀座「姫」のマダムをこなすという多忙な生活の中で、これだけの詞を短期間で用意するのは容易ではなかったはずだ。それもすべて「三谷謙」という無名の下積み歌手のためである。この熱意は一体どこから来るのか。平尾は洋子の意気込みを目の当たりにして「よし、いっちょ僕もこの船に乗っかってみるか」と腹をくくった。

 帰宅して改めて8編の詞を見た。しかし、いずれも凡庸なものばかりだったという。いや、曲にできないわけではまったくない。「作れ」と言われれば、作る。しかし、「これで今までにない曲にする」というのは難しい気がした。「50点や60点の曲ばっかり作ってもなあ」と肩を落とした。

 しかし、その中に一つだけ変わった詞があった。名詞が羅列しているだけの奇妙な詞。そこには「あの人は行ってしまった」という不思議なタイトルが付けられていた。(つづく)

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