物議醸した甲子園“女人禁制騒動”から9年…渦中にいた大分高元マネジャー首藤桃奈さんが語る当時と現在
2016年夏、高野連によって甲子園練習のグラウンドから退場を命じられた女子マネジャーがいた。根底にあった「女人禁制」という規則は大きな議論を巻き起こした。あれから9年。女子マネジャーもグラウンドに立てるようになり、女子野球も甲子園球場で試合が行われるなど、高校野球に大きな転機をもたらした。社会人になった首藤桃奈さん(26)に話を聞いた。
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「甲子園球場練習の前日に部長から呼び止められ、『桃奈も3年間、頑張ってきたんだ。何度も手引書を読み返して確認をした。明日これを着て、いつも通り補助をしてくれないか』と、ユニホームを手渡されたんです」
一夜明けて迎えた当日。ユニホームに袖を通し、その上からジャージーを羽織った。
「大好きな大分高野球部のユニホームを初めて全身で着られてうれしかった」が、グラウンドに立つ踏ん切りはつかなかった。
「女子はダメなのではという不安な気持ちはなく、なによりユニホームがピチピチで恥ずかしくて(笑)。そんな中で室内練習時に部員から、『なんか服(ジャージー)がゴワゴワしてない?』とツッコまれた。一連のことを話したら、みんなが『いいじゃん! 出ようよ!』と。それで決心できました」
結果的に途中退場となったが、規則は規則。今も昔も怒りはないが、首藤さんなりに思うところはあるという。
「たしかに『普通の女子』がグラウンドに立つのは危険です。でも、私たちマネジャーには、部員とともに汗を流してきた3年間の積み重ねがある。監督の後ろ姿だけで次にどっちへ動くか、指導が入るかどうかが分かります。『女子だから』とひとくくりにせず、私たちの日々の活動にも目を向けてほしかった。それが素直な気持ちです。私の行動で高校野球がいい方向に向かうきっかけになっていたら幸いです。が、当時を思い返して怖くなることもあります。大きくネットなどで取り上げていただきましたが、たまたま『女子マネがかわいそう』という方向に転がっただけで、ひょっとしたら、『女子が出場なんてけしからん!』となっていたかもしれませんから」