著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

五木ひろしの光と影<16>「よこはま・たそがれ」誕生秘話…演歌ではなくアメリカンポップス

公開日: 更新日:

 山口洋子は「全日本歌謡選手権」で6週目まで勝ち抜いた無名の下積み歌手、三谷謙の再デビューをプロデュースしようと、平尾昌晃に8編の詞を渡した。平尾によると、いずれも凡庸なもので「これじゃあ、ちょっと難しいかな」と感じた。しかしその中に「あの人は行ってしまった」という不思議なタイトルの詞があった。不思議なのはタイトルだけではない。詞も不思議なものだった。名詞が羅列しているだけなのだ。

「これだけは面白そうだな」と思った平尾はアコースティックギターを手に取った。

 筆者は生前の平尾昌晃にその作曲法を聞いている。「シセン」(詞が先にある場合)は適当にそのフレーズを口ずさみながら「フンフンフンフン」と、なんとなく曲を付けていく。

 詞がいいとすぐに曲が乗る。詞がよくないとなかなか曲は乗らない。「詞がイマイチ」とはそういう意味だ。

「キョクセン」(曲を先に作る場合)のときは、また少し違う。自分で世界観を思い描きながら曲を作るという。ともかく、そうやって「霧の摩周湖」(布施明)も「瀬戸の花嫁」(小柳ルミ子)も「ぼくの先生はフィーバー」(原田潤)も「カリフォルニア・コネクション」(水谷豊)も生み出してきたのである。この「あの人は行ってしまった」という不思議なタイトルの作品は、独特な詞の運びだけに曲に乗せやすく、1時間足らずで曲は出来上がった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する